グローバルに広がるM2M戦線――M2Mの成功モデルを海外へ

M2M(Machine to Machine:機器間通信)市場が本格的に立ち上がり始めた。国内の成功事例を海外へと展開する動きも加速。それに合わせて競争環境は急速に激化している。

「日本国内には多くのM2Mの成功事例があり、大手企業を中心にそのビジネスモデルをグローバルに展開しようとしている。問題は、海外の通信キャリアなどが、この機を狙って国内企業をターゲットに進出してきたことだ。これまでは国内だけの競争だったが、グローバル競争へとM2M市場の環境は大きく変わりつつある。まさに正念場だ」

そう語るのは、NTTドコモ・ユビキタスサービス部長の高原幸一氏だ。「中期ビジョン2015」の柱の1つに、「産業・サービスの融合による新たな価値創造」を掲げるドコモ。M2M事業は、その中期ビジョンにおける新事業領域の1つに挙げられており、現在の事業規模100億円余を2015年には約8倍の1000億円まで拡大させようとしている。

その道筋は大きく3つ。1つは、これまでM2M事業の中心だった自販機や建設機械、自動車といったBtoBの領域における成功事例を、国内外へと横展開すること。2つ目は、電子書籍やフォトフレーム、ゲーム機などのコンシューマ系ビジネスへと拡大することだ。そして、M2Mの対象領域を拡大し回線数を増やす一方、そこから吸い上げられるデータを活用してサービスを提供するアプリ領域でも新たな事業収益を生み出していく。これが3つ目だ。

高まるグローバル展開へのニーズ

この3つの道筋は、ドコモだけでなく、M2Mに使われる通信モジュールやシステム、ネットワークを提供する通信キャリア、ICTベンダーにも共通する。特に、どのプレイヤーも注目しているのが、「成功事例のグローバル展開」だ。

KDDIでM2M事業を手がけるソリューション事業本部・コンバージェンス推進本部・モバイルビジネス営業部長の山口明彦氏は、注力分野について次のように語る。「やはり重要なのがグローバル。業種を問わず、日本で通信モジュールを組み込んで行っていたビジネスを同じように海外でもやりたいという要望を数多くいただく。一般的なICTサービスと同様、M2Mの領域においても日本企業のグローバル進出をサポートしなくてはならない」

これまでKDDIのM2M事業は国内がメインだったが、顧客企業のニーズに応えるかたちで、通信モジュールやSIM、ネットワークの提供をグローバルに行える体制を準備しているという。ゆくゆくは、海外現地法人での人的・技術的サポートにも拡大していく考えだ。

通信機器とグローバルネットワーク、データを蓄積・抽出するセンター機能と、M2Mに必要な仕組みを一括提供する「FENICSⅡ M2Mサービス」を2010年からスタートさせた富士通。ネットワークサービス事業本部・ネットワークフロントセンター・ビジネスプロモート部長の大澤達蔵氏も、グローバル対応をM2M事業のキーポイントに挙げる。

「M2Mで成功しているお客様から『海外でやりたい』という相談はかなり多い。M2Mのビジネスモデルは、成立するまでに期間がかかるため、今は一部の企業が先行している状態。新たなビジネスが生まれるかは、その会社の方針や能力に依存するから、すでに成功している例を海外展開するほうがハードルは低い」

図表1 富士通「FENICSⅡ M2Mサービス」
富士通「FENICSⅡ M2Mサービス」

そこで、FENICSⅡ M2Mサービスでは、海外キャリアへの対応力を最大の価値として訴求している。M2Mビジネスを展開する企業が、複数の海外キャリアと個別に調整を行うのは難しい。回線の調達から障害対応、技術仕様の調整など、行うべきことは多岐にわたる。「富士通のM2Mプラットフォームを通して海外のネットワークを使うことで、キャリア間の差異が無くなる」点をアピールしている。

月刊テレコミュニケーション2013年3月号から一部再編集のうえ転載(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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