Webアプリケーション／コンテンツ配信ソリューション等を提供するアカマイ・テクノロジーズは2011年8月22日、記者向けに同社の事業戦略説明会を開催した。

米アカマイ・テクノロジーズ製品担当上席副社長のクリス・シャトル氏

米アカマイ・テクノロジーズの製品担当上席副社長であるクリス・シャトル氏は、「これまでISP向けに提供してきた当社のプラットフォームを、エンタープライズネッワークとモバイルネットワーク向けにも提供していく」と説明。同社は現在、70カ国超で製品提供を行っており、シャトル氏によれば世界のWebトラフィックの15～30％が、ISP等に導入されたアカマイのプラットフォーム上でやり取りされているという。こうしたインターネット上で利用されるパブリッククラウドの領域に加え、「エンタープライズWANで利用されるプライベートクラウドや、モバイルクラウドの領域にもアカマイのプラットフォームを拡張したい」と話した。

シャトル氏が強調するのは、企業のクラウド利用形態の変化だ。SaaS／PaaS／IaaSといったパブリッククラウドサービスの利用が増える一方で、これらとプライベートクラウドおよびオンプレミス型システムを連携させて利用する、いわゆる「ハイブリッドクラウド」実現ニーズが立ち上がると予想。また、スマートフォンやタブレット端末からSaaS等を利用する企業の増加も予測される。

こうしたニーズに応えるため、パブリッククラウド、プライベートクラウド、モバイルクラウドのすべてに対応できる「一貫したプラットフォームを提供する」のがアカマイの狙いだ。

2011年上半期に、エンタープライズ向け、モバイルキャリア向けに強みを持つ4社との提携を発表。エリクソンとは、「モバイルクラウド高速化ソリューション」の共同開発を進めている

そこで重視しているのがパートナー戦略である。同社は2011年上半期に、ラックスペース、IBM、リバーベッドテクノロジー、エリクソンの4社との提携を相次ぎ発表した。これらのパートナーが提供する製品等にアカマイのWebアプリケーション・アクセラレータなどを搭載することで、エンタープライズネットワークや移動体通信事業者への展開を進める方針だ。

ラックスペースとの提携については、同社のホスティングサービスにおいて、アカマイのWebアプリケーション・アクセラレータを組み込んだマネージドサービスが提供されているという。IBMとは共同で、クラウドアプリケーションを高速化する「IBM WebSphere Application Accelerator for Public Networks」と「WebSphere Application Accelerator for Hybrid Networks」を開発。アプリケーションのパフォーマンス向上とともに、クラウドアプリとオンプレミス型システムとの連携も実現する。

リバーベッドテクノロジーとは、パブリッククラウドとプライベートクラウドの両方の環境でアプリケーションのパフォーマンスを向上させる新製品を共同で開発

WAN高速化ソリューション等を提供するリバーベッドとは、両社の製品を組み合わせることで、WAN経由でもインターネット経由でも良好な環境でSaaSが利用できるソリューションの開発を進めているという。2012年の第1四半期に新製品の提供を開始する予定だ。

エリクソンとは2011年2月に、移動体通信事業者へのソリューション提供に関する提携を発表した。エリクソンのモバイルインフラ向け製品にアカマイのコンテンツ／アプリケーション配信ソリューションを統合して提供する。現在、3Gネットワーク上でWebアプリケーションを高速化する「Mobile Cloud Accelerator Service」を開発中で、すでに複数の通信事業者においてトライアルが進められているという。

エリクソンとは共同で「Mobile Cloud Accelerator Service」の開発を進めている

シャトル氏は、「モバイルネットワークではインターネットとは異なる独自のプロトコルを使用しているため、従来のアクセラレータでは、スマートフォン等からのWebアクセスを最適化することはできない。アカマイのモバイルクラウドアクセラレータを採用することで、高品質なサービスと新しいビジネスが可能になる」とアピールした。高品位なモバイルコンテンツ配信やモバイルeコマースサービスの提供が可能になるという。