「スタートアップ共創で広げる5G」ジャフコ高原瑞紀氏に聞く

通信事業者とスタートアップが連携し、5Gのユースケースを拡大する動きが増えている。ベンチャーキャピタルの“老舗”であるジャフコの高原氏は、「5Gによる社会課題解決には双方の共創が不可欠」と語る。

――スタートアップ企業が自らの事業に5Gを必要とするシチュエーションにはどういったものがありますか。

高原 5Gはあくまで手段です。これをもって何を解決するかという点にフォーカスが当てられています。コンシューマー向けに大容量の動画を多数同時接続で配信することができ、新しい事業が生まれたというのがわかりやすい例です。当社ではeスポーツチーム運営企業にもご出資していますが、試合をTwitchなどのライブ配信プラットフォームを使って臨場感高く視聴者に届けるにあたって、回線の強さは大事になります。

ただ、大きいインパクトがあるのは物流・交通、建築などのBtoB領域と見ています。その1つが自動運転です。5Gによってレイテンシーが小さくなったことで、遠隔操作で車をきちんと制御できるようになり、自動運転の最終形態に近づいています。

ドローンも同様です。5Gによって遠隔制御が可能になると人手を削減でき、費用対効果が合いやすいソリューションになります。このように、これまでできなかったことが5Gによって可能になるという産業があります。

ジャフコ 西日本支社長 パートナー 高原瑞紀氏

ジャフコ 西日本支社長 パートナー 高原瑞紀氏

――各通信事業者は、5Gを広げるためにスタートアップとの共創が必要と考えていますか。

高原 明確にそうです。社会課題が多様化し複雑化していく中で、5Gを使って社会課題を解決しようとしても通信事業者がすべての事業機会を捉えることは困難です。社会課題に取り組んでいるスタートアップからアプローチがあると、通信事業者は5Gとの相性や自分たちのテーマとの親和性を考えて事業化を進められるというメリットがあります。

――スタートアップと通信事業者の連携方法は。

高原 通信を使ってイノベーションを起こしたいスタートアップから見ると、どの通信事業者と組むかは重要な意思決定になります。プロジェクト単位のミニマムな形から、事業提携のような包括的な方法、資本を投入しインサイダーとして関わってもらう形まであり、どの形がいいのかはケースバイケースです。当社は過去の事例から蓄積してきた知見もフル活用し、通信事業者に対してどのような提携の提案を行うかをスタートアップに助言することもあります。

――通信事業者が投資するメリットは。

高原 通信事業者がスタートアップに投資して5Gビジネスを行う目的の1つに囲い込みがあると考えられます。ある産業に投資するとき、通信事業者は自らの事業範囲の中で多面的に捉えて、まず通信インフラを掌握し、将来的にその産業が普及したらグループ内の他の事業と組み合わせたりすることなどを構想しているのではないでしょうか。

通信事業者は事業ドメインがかなり広いため、自分たちの部署の事業と5Gをかけ合わせるとどういったイノベーションが起こるかを考えます。そのポートフォリオは自動運転から医療、エンターテインメントなど多岐にわたります。

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