「目指すはクラウドインテグレーター」日本情報通信 野村雅行社長インタビュー

NTTのネットワーク技術とIBMの情報系技術を併せ持つ日本情報通信。クラウド時代を見据え、2年前から事業に取り組み、2010年度は実績を上げ始めた。「クラウドインテグレーターを目指す」と語る野村雅行社長に今後の成長戦略を聞いた。


――東日本大震災はICT業界にも甚大な被害を与えましたが、どのような特徴があったのでしょうか。

野村 固定通信、移動通信を問わずかつてない規模での被害が発生し、通信事業者は復旧に全力で取り組んでいます。通信設備の被害はまさに未曾有のものです。企業のコンピューター設備とデータの被害も大規模なものでした。例え建物の倒壊は免れても、機器が壊れたり使えなくなったりという被害は甚大です。

我々SIerも殺到する企業の復旧要請、サポート要請に全力で応える毎日です。特に直後の停電と、その後の計画停電の影響で仕事ができなくなったのが今回の大きな特徴です。

――計画停電は各産業の生産再開、操業計画にも影響を与えていますね。

野村 3時間停電といっても前後3時間ずつ機械の調整に時間を取られるので結局操業中止しかないとも言われました。ICT分野でいうとデータセンター(DC)の耐震性や非常時電源、データの分散配置といったディザスタリカバリ面のメリットが改めて見直されたと思います。これまでDCには、一部の重要な機器だけを預けることが主流でしたが、今後はほとんどの機器を預けるということが加速するのではないでしょうか。

――クラウド化が加速すると。

野村 そう思います。クラウドについては、キャリアやSIerなどが提供するサービスの利用も拡大するとみています。初期投資を安価に抑えることができ、短期間での利用開始が可能ですので、震災からの早期復旧を目指すにはうってつけです。また、一旦落ち着いた計画停電問題も、夏場に再び深刻化することが考えられます。そうなると、在宅勤務(テレワーク)などのワークスタイルの変革が求められ、それに対してもクラウドは有効になります。今回の震災を契機に日本全体の産業構造の在り方まで再構築が求められていますが、ICT業界でも災害対策、BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)策定の観点からも一層のネットワーク活用とクラウド化が加速するのではとみています。

日本情報通信 代表取締役社長 野村雅行氏

ネットワーク技術に強いSIer

――御社は1985年にNTTと日本IBMの50%ずつの共同出資のSIerとして設立され今年で26年目ですが、競合他社に対する強みはどこにありますか。

野村 当社はIBMの情報系技術と、NTTが持つネットワーク技術を兼ね備えているのが特徴です。ネットワークの部分まで含めて自社で手掛けられるSIerは少ないので、そこが我々のベースとなる強みです。

IBM製品に強い点もセールスポイントです。IBMは製品ごとに認定を取得しないと扱えませんが、我々はハード、ソフトのすべての製品で認定を取って扱っています。日本IBMが同社のビジネスに顕著な貢献をしたパートナーを表彰する「IBMエクセレント・パートナー・アワードJapan」があるのですが、当社は昨年、IBMのビジネスパートナーで売上1位となり、総合部門で「エクセレント・パートナー・オブザイヤー」、サービス・ソリューション部門で「サービス・エクセレント・パートナー」をダブル受賞しました。

――2009年度の売上高は連結ベースで423億円となっていますが、NTT関連と一般企業向けの売上比率は。

野村 NTT関連の売上は最大で6割あった時期もありますが、NTT関連を手堅くやりつつ、次第に一般企業向けの事業展開に注力したことで、ここ10年ほどはNTT関連が3割、それ以外が7割で推移しています。

月刊テレコミュニケーション2011年5月号から再編集のうえ転載(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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野村雅行(のむら・まさゆき)氏

1971年3月慶応義塾大学工学部機械工学科卒業、73年3月名古屋大学大学院2年修了。4月日本電信電話公社入社。92年4月日本電信電話・グループ事業推進本部事業企画部担当部長。その後、パケット通信事業本部企画部長などを経て99年7月にNTTコミュニケーションズ・ビジネスユーザ事業部データネットワークサービス部長に就任。その後、常務取締役ソリューション事業部長などを経て05年6月代表取締役副社長。08年6月日本情報通信代表取締役社長就任。現在に至る。1949年1月生まれ、東京都出身

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