「世界は変わった。企業はこれから分散型の組織として振る舞っていかなくてはならない」
2022年8月29日にガートナーがオンライン開催した「デジタル・ワークプレース サミット 2022」。シニアディレクター アナリストのトニー・ハーヴェイ氏は「ハイブリッド・ワークプレースのためのインフラストラクチャ」と題した講演でそう述べた。
ガートナー シニアディレクター アナリストのトニー・ハーヴェイ氏
リモートワーク/ハイブリッドワークが常態化する今後、企業は、従業員が“4つの働き方”を自由に選択できるようにしなければならないと同氏は指摘した。(1)同じ場所で共に働く、(2)同じ場所で個別に働く、(3)別の場所で共に働く、そして(4)別の場所で個別に働く、の4つである。
インフラ戦略の「6つの柱」
この環境を実現するためには、PC等のエンドポイント、データ/アプリケーションの保存・稼働領域であるサーバーやクラウド、そしてネットワークを含めたインフラストラクチャの再編、見直しが不可欠だ。新時代のインフラ戦略で重要なポイントとしてハーヴェイ氏が挙げたのが、次の6点である。
リモートワーク/ハイブリッドワーク実現のための6ポイント【出典:Gartner(2022年8月)】
1つめは、複数のデバイスにわたって一貫したエクスペリエンスを提供することだ。
リモートワーク/ハイブリッドワークの環境では、従業員はファットクライアントや仮想デスクトップ(VDI)、DaaS(Desktop as a Service)、さらに私用PCとそれぞれ異なる端末を使う。利用するデータの所在もオンプレミスとクラウドに分散。さらにアプリケーションも多様化している。この多種多様な環境で「一貫したエクスペリエンス」を実現することは容易ではない。
2つめと3つめは、そうした従業員をサポートするIT部門の効率化、負荷軽減にも関わるポイントだ。「自動化の投資対象を絞り込むために、測定して分析する」と「リモート・サポートに最適化する」である。
社内システムやマルチクラウドに対する多様なアクセス方法をサポートし、適切なセキュリリティ対策を行うことをはじめ、端末/ネットワークの設定管理は複雑化する。従業員が分散して働く状況では、こうした作業は可能な限り自動化することが求められる。また、IT部門のサポートも、リモート化を前提としたかたちに組み立て直さなければならない。
そのためには業務プロセスを検証し、端末やネットワーク/セキュリティの仕組みやサポート体制を「リモート優先」で最適化する必要がある。
4つめと5つめは、オフィス環境の変革だ。仕事は主に自宅で行われ、従業員はコラボレーションのためにオフィスにやってくる。これに適したかたちへと「ワークプレイス・インフラを適用させる」。そして、「オフィスを『We-Space(共有スペース)』に変化させる」ことも必要だ。
最後はセキュリティだ。「もはやペリメータ(境界)は存在しない」(ハーヴェイ氏)。従来のように社内と社外を単純に分けられない状況へと移行した今、「ゼロトラストとペリメータレス・セキュリティを導入する」ことの必要性を訴えた。