知性を持つ会議室が“もう1人の参加者”としてアイデア出しや意思決定をサポートしてくれる─。東京都・京橋の「イトーキ東京イノベーションセンター SYNQA」内に、そんな未来の会議空間のプロトタイプがある。
これは、2014年11月から日本ユニシスとイトーキが進める共同研究「近未来オフィス U&I空間プロジェクト」を具現化したものだ(15年11月から公開)。ヒトの会話を理解して類推・連想できる知性を備えたAIを、オフィス空間のコミュニケーション支援に使おうというのがそのコンセプト。「コモンセンスAI」と呼ぶ日本ユニシスのAI技術と、イトーキのオフィスデザインの知見を組み合わせて、会議室をAIのインターフェースとして用いている。
日本ユニシスの総合技術研究所で上席研究員を務める山田茂雄氏は、「AIがマイクで会話を聞き、壁やテーブルに情報を表示することでコミュニケーションを活性化させる」と説明する。
役立ちそうな情報をAIが推測AIは具体的に何をするのか。
まず、参加者の発話を拾い、単語に分解して壁面に表示する。ポイントは、AIが言葉の重要度を計測している点だ。情報探索やテキストマイニングの分野で使われる、「TFIDF」という重み付けの手法を使って特徴的な言葉を拾い上げ、重要なキーワードはテーブルに表示する。議論が停滞した際などにそれを見れば、議論の流れやキーワードを振り返ることができるのだ。
イトーキ東京イノベーションセンター SYNQAにある「人工知能を融合した会議支援空間」プロトタイプ。参加者が話した言葉をマイクで拾い、壁面に投影する |
2つ目は、レコメンデーションだ。テーブルが時々、キーワードに関する情報を表示する。例えば、その単語に関するニュースや、Twitterのつぶやきを探して「いま役立ちそうな情報をAIが判断して出してくる」(山田氏)。人間がキーワードを選んでタッチして、求める情報を引き出すことも可能だ。
AIが言葉の重要度を算定して、その数値の高いキーワードは参加者が囲むテーブル上に表示 |
3つ目は、アンチョコの機能だ。AIは、参加者が過去に話した内容や電子メール等でのやり取りを把握しており、会議に登場した言葉のうち、「この人には馴染みがなく、きっと理解していないだろう」と判断した言葉の意味を、各自が持つスマートフォンやPCの画面、メガネ型ディスプレイにこっそりと表示してくれる。この機能に関してはまだコンセプトに過ぎず、現時点では、特異な言葉を表示しているだけだが「その人のボキャブラリをある程度推測できるため、将来的にはパーソナライズした情報を出せるようになる」とイトーキ・先端技術企画室事業企画チームの藤田和之氏は話す。