<特集>5Gインフラ ディープガイド目指せ!ミリ波先進国 エリア改善ツールが続々登場

従来は軍事レーダーや衛星通信に限られていたミリ波は、技術の革新により5Gにも開放され、高速大容量を実現する。エリア構築は難しいが、それを解決する様々なツールや技術も開発されている。

ミリ波の活用は“革命”──。そう捉えるモバイル関係者は少なくない。5Gの可能性がミリ波によって革命的に広がること、その一方でモバイルにとってミリ波は今回が初めてのチャレンジでもあることが理由だ。

ミリ波とは波長1~10ミリメートルの電波を指し、周波数に換算すると30~300GHz。5Gの文脈においては26~29GHz帯もミリ波帯として扱われている。周波数は基本的に高いほど伝送容量が大きくなるが、減衰も大きくなり伝搬距離は短くなるという特性がある。また、波長が短いほど回折が難しく(=障害物に弱く)、直進性が高くなる。これらの特徴は1つの基地局で広いエリアをカバーする必要がある移動体通信には不向きなことから、軍事用レーダーや衛星通信などの用途に用いられていた。

新資源を発掘しかし、従来の使い道が限定的ということは、裏を返すと帯域を広く確保しやすいことでもある。ネットワークはよく道路に例えられるが、道路の幅に当たる帯域幅が広いほど、高速で安定した通信が可能になる。

実際、5Gでは各キャリアに最大400MHzもの広い帯域幅が割り当てられている。「サブ6と呼ばれる3.7/4.5GHzの帯域では100MHzずつ割り当てられているが、ミリ波帯ならば400MHz使えるため、“土管”としては相当広い。技術が成熟していくと、通信品質は最終的に帯域幅周波数のリソースで決まる」とNTTドコモ 6G-IOWN推進部 無線技術担当 担当課長の須山聡氏は解説する。

ミリ波の活用について、クアルコムジャパン マーケティング ディレクターの森下和彦氏は「シェール革命」を引き合いに出す。米国では2000年代後半に、地下約2000メートルのシェール層に閉じ込められた天然ガスの掘削が、技術革新によって可能になった。これにより米国はエネルギー自立を果たし、石油の純輸出国となっている。

クアルコムジャパン マーケティング ディレクター 森下和彦氏
クアルコムジャパン マーケティング ディレクター 森下和彦氏

ミリ波も、従来は軍事用レーダーや衛星など一部の領域でしか使えなかった資源だ。それが、「技術が発達したために、従来はあまり使えなかったリソースが一般消費者にも使えるようになった」と森下氏は語る。この新しい領域を使いこなすことが、5Gの「高速大容量」「超低遅延」「多数同時接続」などの特徴を実現するには不可欠だ。

月刊テレコミュニケーション2021年9月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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