放送・配信現場にワイヤレス化の波 コロナ禍で4G/5G映像伝送に脚光

放送・業務用映像を扱う現場でビデオ伝送の無線化が進んでいる。コロナ禍でスポーツ/イベント中継・配信の需要が増加。業務のリモート化と5Gの普及で、ワイヤレスビデオ伝送の普及がさらに加速しそうだ。

「無線での映像伝送の需要は昔からあるが、コロナによってそれが爆上がりした。イベントに人が呼べなくなり、ライブ放送・ネット配信のニーズが爆発的に増えたのがきっかけだ。ビデオ中継のための環境が元々整っていない場所で映像を撮り、それをライブ配信するとなると無線を使う以外に方法がない」

そう語るのは、映像制作や撮影用機材の販売・レンタル事業等を手掛けるPANDASTUDIO.TV コンテンツ事業部の中村央理雄氏だ。ビデオカメラやスイッチャー、編集用機材等とともに、ライブ配信用の通信ネットワーク機器も幅広く取り扱う。撮影した映像データをスイッチャー等に無線伝送するワイヤレスビデオトランスミッターや、携帯電話回線で遠隔地の放送局、受信サーバーに届けるための中継機が人気だ。

PANDASTUDIO.TV コンテンツ事業部 中村央理雄氏
PANDASTUDIO.TV コンテンツ事業部 中村央理雄氏

ネット配信の隆盛が引き金に新型コロナウイルスの感染拡大以降、スポーツや音楽ライブをはじめとするイベント中継・ライブ配信の需要が急騰した。ただし、そうした“リモート化”“オンライン化”のために不可欠なネットワーク環境が整った施設は限られている。

例えばプロ野球やJリーグの試合が行われるスタジアムのようなテレビ中継設備が完備されている場所では、カメラからスイッチャーまで映像を伝送するためのSDI/HDMIケーブルが壁内等に人の往来を妨げないかたちで敷設されている。だが、ネット配信の隆盛と、それに続くコロナ禍で立ち上がったのは、「今までテレビがカバーしていなかったコンテンツを配信したい」というニーズだ。

ケーブルが敷設されていない場所や屋外のイベント会場でSDI/HDMIケーブルを引き回すことは撮影者の機動力の観点からも、安全の面からも適切でない。観客の足を引っ掛けて怪我させる恐れがあるため、ケーブルの使用を禁止されることも多い。こうしたケースでは、ワイヤレスビデオトランスミッターが有用だ。

また、屋外での中継や取材等では光回線を用意できないため、LTE回線で放送局等と接続するための中継装置が必須になる。単に映像データを送信するだけならノートPCとモバイルルーターで十分かもしれないが、放送・ライブ配信業者の要求を満たすには通信遅延をコントロールしたり、安定的に映像を伝送するために回線状況をモニタリングして解像度やフレームレートを調整したり、簡便な操作または自動で映像圧縮やファイル転送ができる機能などが求められる。こういった要件を満たすプロ向けの中継機も充実してきている。

月刊テレコミュニケーション2021年6月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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