2019年に開催された世界無線通信会議(WRC-19)において275~450GHz帯が、新たに陸上移動および固定業務に使用する周波数帯として合意された。トータルで137GHz(275~296GHz、306~313GHz、318~333GHz、356~450GHz)にも及ぶ帯域が今後、セルラーシステムで利用できるようになる可能性がある。
5Gでは今後、90GHz程度までのミリ波帯の利用が検討されるが(図表)、Beyond 5G/6Gではその上の100GHz以上、つまり「テラヘルツ波」の活用が焦点になる。
図表 6Gに向けた周波数帯の開拓
高周波数帯には膨大な電波資源が手つかずのまま残されており、まとまった広い帯域幅を使って超高速通信ができるのが魅力だ。なかでも275GHzより上はほぼ使われておらず、“300GHz帯”の活用に期待が集まっている。
キーサイト・テクノロジーのニコルズ氏は、「より高い周波数の追加が注目されている。110GHzから最大330GHzまでの周波数を活用した実用的な通信・画像技術が開発されることを期待している」と話す。
「44GHz幅」との出会い275~450GHz帯の周波数分配はこれから行われるが、その直下の252~275GHzはすでに固定無線と陸上移動無線への分配が確定している。これを含めた「252~296GHzが連続して使えるようになれば、44GHzもある帯域と我々は初めて出会うことになる。日本でキャリア4社に分けても、1社当たり11GHz幅が使える。理論上は、1Tbps無線も可能な帯域幅だ」。情報通信研究機構(NICT)Beyond 5G研究開発推進ユニット長の寳迫巌氏はこう期待を膨らませる。
国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT) Beyond 5G 研究開発推進ユニット長 寳迫巌氏
実効速度は理論値の10分の1程度としても、無線で100Gbps出るとなれば夢は広がる。例えば、8K/60fpsの非圧縮映像を伝送するには48Gbpsが必要だが、これを右眼・左眼用に2つ送って立体視するアプリケーションが無線でできるようになるのだ。
膨大な情報をエッジサーバーやクラウドに届ける上り通信に適用すれば、さらに夢は広がる。例えば脳情報の読み取りも無線化し、「脳同士が直接通信するような世界もあり得る」(寳迫氏)。テラヘルツ波は減衰しやすいので屋外や長距離通信には適さないが、たとえ屋内・近距離通信に用途が絞られたとしても、現在ではSFに過ぎないような使い方が実現する可能性は高い。