SPECIAL TOPICIIJ、ヤフー、KADOKAWA、ブロードバンドタワーに学ぶ。先進4社はネットワークのオープン化で何を得たか?

ネットワークの世界にも着実に浸透するオープン化の波。マクニカが4月21日に開催したWebセミナー「5G時代の通信インフラにイノベーションを」には、この潮流をいち早く取り込んだ4社の担当者が顔を揃えた。オープン化に踏み出した理由と成果、そして“これから始める人達へのアドバイス”をまとめた。

主にデータセンターネットワークで進行している“オープン化”は、次の2つの動きで捉えられる。

1つは、ネットワーク機器を構成する「ハードウェアとソフトウェアの分離」だ。台湾のODMベンダー等が製造・販売するホワイトボックススイッチ上で、ユーザーは好きなネットワークOSを使うことができるようになる。ハードウェアとOSの個別調達により、コストの最適化・低廉化、柔軟性の向上などが期待できる。

インターネットイニシアティブ(以下、IIJ)先行開発室 室長の金田克己氏はこのオープン化の背景について次のように語る。

「サーバーも以前はハードウェアとOSのベンダーが一緒だった。スイッチにおいても同様に、ハードとOSを別々に買っても動かせるようにしようとする動きが出てきた。これによって、新たなベンダーが参入しやすくなって市場が活性化していく。ホワイトボックススイッチの登場によって様々なネットワークOSが開発されるようになった」


インターネットイニシアティブ(IIJ)先行開発室 室長の金田克己氏(左)と、
ブロードバンドタワー 執行役員 Cloud&SDN研究所 所長の西野大氏

そして、もう1つが「ネットワーク機器本体と光トランシーバーの分離」だ。

スイッチ/ルーターに挿す光トランシーバー・モジュールは通常、機器メーカーが販売する純正品を用いるが、この縛りをなくし、サードパーティ製の「非純正」モジュールを採用する動きが出てきた。なお、光トランシーバー・モジュールを“Optics”と、この手法そのものを“Third Party Optics”と呼ぶ場合がある。


製造元から直接供給される非純正トランシーバーは、
純正品と比べて性能・品質面で大きな差はないという

前述のハード/ソフト分離よりもコスト効果が目覚ましいこともあり、近年は国内でも大手クラウドDCを中心にこのThird Party Opticsが普及してきている。今回、マクニカ主催のWebセミナー「5G時代の通信インフラにイノベーションを」では、先行導入した4社がその理由や成果などについて講演した(講演者とタイトルは下記の通り)。本稿ではそのポイントを整理し、Third Party Opticsがもたらすメリットと、導入における留意点を解説する。

<講演者と講演タイトル>
●インターネットイニシアティブ(IIJ)先行開発室 室長 金田克己氏
 「データセンターネットワークのオープン化」

●ブロードバンドタワー 執行役員Cloud&SDN研究所 所長 西野大氏
 「ネットワーク装置のディスアグリゲーションとオープン化の潮流」

●KADOKAWA Connected KCS部 Network&Facility課 課長 東松裕道氏
 「コンテンツ配信ネットワークOptics完全オープン化 ~4年間で経験した運用のコツと新しいチャレンジ~」

●ヤフー サイトオペレーション本部 インフラ技術1部 ネットワーク開発 高橋翔氏
 「ヤフーが IP Clos Network に 3rd partyトランシーバを導入・運用して学んだこと」

なお、同セミナーにおいては、総務省とNTTドコモも登壇して5G、および次世代のBeyond 5Gをテーマに講演した。その内容については、下記の記事が詳細にレポートしている。

5Gの時代と、その先にある“Beyond 5G”を見据えたネットワーク戦略の最先端

「DCネットワークコストの9割」にメス
非純正品と聞くと、誰もが“安さ”を連想するだろう。その通り、Third Party Opticsの最大のメリットは光トランシーバーコストの低廉化だ。特に、25/40/100Gbpsなどの大容量トランシーバーを大量に使用する場合には目覚ましい効果が期待できる。

ブロードバンドタワーの西野大氏によれば、DCネットワークを100Gbps化する際には「光トランシーバーの価格が悩みの種になる」。純正品を用いた場合、ネットワーク全体のコストのうち光トランシーバーのコストが支配的となり、「全体の9割を占める場合もある」からだ。これを非純正品に替えることで、圧倒的なコストカットが可能になる。

実は、従来型のネットワーク機器をホワイトボックススイッチに変更しただけでは、コスト効果はそれほど見込めない。「10Gまでなら、従来メーカーのスイッチとホワイトボックスで明らかな差はない」とIIJの金田氏は語る。どころか、ハードウェアとネットワークOSの変更によって「教育コストがかかる」ため、かえって不利になるケースもある。


Third Party Opticsが使えることが、ホワイトボックススイッチの大きな利点だ

だが、DCネットワークを広帯域化するとなると状況は変わる。「25Gが主流になって状況が一変した。トランシーバーのコストが、メーカー純正品だと馬鹿にならない。サードパーティ製トランシーバーが使えるホワイトボックスのほうが明確に有利になった」(金田氏)のだ。トランシーバー込みで比較した場合、調達価格には2~3倍の開きが出ることもあるという。

次に、ヤフーとKADOKAWA Connectedが手にした具体的な成果をみてみよう。

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