NTTコミュニケーションズ(以下、NTT Com)は、1MBまでの低容量通信を安価に利用できる「100円SIM」、自動車や機械、家電製品をネットワーク経由で管理・制御するために必要な機能を提供する「Things Cloud」など、IoT領域のサービスを積極的に展開している。この4月には国内MVNOとして初となる、eSIM(embedded Subscriber Identity Module)を使ったモバイル通信サービス「IoT Connect Mobile」の提供を開始した。
IoT Connect Mobileは、日本を含む196の国・地域で利用することができ、グローバルにビジネスを展開する企業をターゲットとする。現在、基板上に表面実装が可能なチップSIMもeSIMと呼ばれているが、IoT Connect Mobileはそれだけに留まらず、遠隔操作でプロファイルを変更できる点が特長だ。このため、IoTシステムをグローバルに展開する際、わざわざSIMを差し替えたり、現地に行って設定を書き換えたりすることなく、それぞれの国・地域で最適なモバイルキャリアのネットワークを使ってデバイスをネットワークに接続できるという大きなメリットがある(図表)。
図表 IoT Connect Mobileのサービス概要 |
NTT Com ネットワークサービス部 販売推進部門 MVNO担当の村田一成氏は「現状でサポートしているプロファイルは1つですが、6月頃には新たなプロファイルを追加する予定です。国・地域に応じてプロファイルを切り替えることで、最適な通信料金で利用していただけます」と話す。
各地域のゲートウェイで遅延を解消プロファイルの切り替えを行うWebポータルでは、利用しているすべてのSIMの状況を把握できるほか、追加発注や回線単位での利用休止・再開、詳細なカスタマイズなどが可能になっている。さらに見逃せないのが、SIMごとの通信容量や速度などを設定できる点だ。これにより、「少量のデータを流すときは通信容量を10MBにして通信料金を抑える」「固定回線の代替として使うときは容量無制限にする」など、用途に応じて柔軟にプランの設定を行える。
IoT Connect Mobileは、遅延の影響を抑えられることも強みとなっている。この点について、ネットワークサービス部 販売推進部門 MVNO担当の青木貴史氏は次のように説明する。
「従来のグローバルSIMも1枚で世界中の拠点をカバーできますが、ローミングするキャリアのネットワークを経由するため、利用する地域によっては遅延が大きくなる可能性があります。そこでIoT Connect Mobileでは、欧州や北米、アジアといった各地域にゲートウェイを設置し、遅延を大幅に解消しています」
国・地域ごとに個別にモバイルキャリアと契約する必要がないこと、そして料金の支払いが円建てであることもメリットだ。複数のモバイルキャリアを利用する場合、支払い処理が煩雑になるうえ、現地通貨での支払いとなれば為替リスクも気にしなければならない。IoT Connect Mobileであれば、こうした手間が省かれる。
すでに提供している100円SIMとの違いは、利用するネットワークだ。IoT Connect Mobileはインターネット、100円SIMは閉域網接続となる。このため、料金やセキュリティなど、ネットワークに求める要件に応じていずれかのサービスを選択することになる。