「URLLCは無線インターフェースの進化と、コアネットワークのアーキテクチャ刷新の2つが組み合わさることで初めて実現される」
こう話すのは、ノキアで技術統括部・部長を務める柳橋達也氏だ。
ノキアソリューションズ&ネットワークス 技術統括部部長 柳橋達也氏
まず、無線区間の遅延は、データの送信間隔を縮めることで短縮する。
基地局と端末間でデータ送信を行う際には、無線リソースを割り当てるスケジューリングを行う。その伝送時間間隔(Transmission TimeInterval:TTI)がLTEでは1msだったが、5Gではこれを0.25msに縮める。データ送受信時の待ち時間が4分の1に縮まるわけだ。
ただし、単にTTIを短縮するだけでは、1つの送信単位で送れるデータ量が減ってしまう。そのため、1つのサブキャリアの幅を長くすることで、送信間隔を短くしながらもより多くのデータを伝送できるようにしている。5Gでは高い周波数帯を用いることで、連続した広い帯域幅を使えるようにしているため、このような仕組みが可能になるわけだ。
さらに、信頼性の向上についても、メッセージの複製送信など複数の機能拡張が行われている。
コア網は抜本的な刷新一方、コアネットワークは抜本的なアーキテクチャの刷新が行われる。URLLCを実現するという観点であえてわかりやすく言えば、“エッジコンピューティングをやりやすくする”ための刷新だ。
エッジコンピューティングを行うためには、携帯電話網を通るトラフィックを基地局のそばやコアネットワークの途中に配置されるアプリケーションサーバーに届けて処理させなければならない。
だが、LTEのコアネットワークでは、インターネットやアプリケーションサーバーに接続するための出口は、コアネットワークの中央に配備されるゲートウェイの1カ所に決まっていた。端末ごとに外部の接続先がすべて1カ所(例えばインターネット)に集中するなら出口は1つで構わないからだ。
一方、エッジコンピューティングを行う場合は、それでは都合が悪い。エッジ処理を行うアプリのトラフィックは、インターネット向けのトラフィックとは区別して、エッジサーバーの近くの出口から出す必要がある。
そこで、5Gのコアネットワーク(5GC)ではこの出口に当たる「UPFunction」と呼ばれるノードを「1つのデータコネクションに対して複数持つことができるようにしている」(柳橋氏)。これを示したのが図表1だ。
図表1 エッジコンピューティングのためのコアネットワーク
5GCでは、コントロールプレーン機能とユーザープレーンの機能を明確に分離することで、これを実現する。LTEコア向けの装置は両方の機能が一体となっているため、配置の自由度が低かった。これを完全に分離することで、制御信号の処理等を行うコントロールプレーンを中央集中型で配備しながら、ゲートウェイ等のユーザープレーンの機能を分散配置できるようにするのだ。