KDDIは2016年1月19日、電力小売の全面自由化が実施される4月1日から、電力サービス「auでんき」を全国(沖縄および一部の離島を除く)で提供すると発表した。
auでんきは、KDDIのスマートフォン/携帯電話ユーザーを対象とするもので、家庭向けの「でんきMプラン」と商店や事務所向けの「でんきLプラン」の2プランが用意される。
auでんきの料金体系・水準は各地の地域電力会社が家庭などに広く提供している現行の小口ユーザー向け料金プラン(従量電灯B、従量電灯C)と同一。KDDIのスマートフォン/携帯電話と合わせて利用することで、毎月の電気利用料金に応じた額を請求月にau WALLET プリペイドカードにキャッシュバックしてコストメリットを出す形だ。au WALLETは携帯電話料金の支払いにも使える。キャッシュバック率は、当月の電気利用料金が5000円未満なら1%、5000円以上8000円未満で3%、8000円以上の場合は5%となる。KDDIは1月20日からWebサイト、auショップなどで受付を開始する。
CMに出演する菅田将暉さんと「auでんき」をアピールする石川専務 |
19日に都内で開かれたauでんきの記者発表会で、KDDI代表取締役執行役員専務の石川雄三氏はauでんきの大きな特徴を「どんな家族構成、どんな季節であっても必ずお得になるわかりやすさにある」と説明。他社が力を入れている比較的利用の多い家庭向けのプランに対しても「十分に競争力がある」と強調した。
季節によって電気使用量が変動しても確実にコストメリットが生じることがauでんきの大きな特徴の1つ |
地域電力会社や家庭向け電力販売に新規参入する企業による自由化以降の新料金の発表が相次いでいるが、これらの料金には体系が複雑でユーザーにとって本当にメリットがあるのか分かりにくいものが少なくない。電気の使用量は季節によって大きく変動するため、利用の少ない月は割高になるケースもある。KDDIはわかりやすく確実にユーザーにメリットがある料金を提供することで、自らのスマホ/携帯電話ユーザーを広くauでんきで囲い込むことを想定している。固定回線とのセット割「スマートバリュー」とauでんきとの併用も可能だ。
スマートメーターから得られるデータを活用した節電のアドバイスも提供される |
auでんきで興味深いのが、提供エリアによって異なる事業形態を取っていることだ。まず関西・中国地区では、それぞれ関西電力と中国電力との業務提携によって電力サービスを提供する。KDDIが関電、中国電力の電気を代理販売し、販売手数料を原資の一部としてスマホ/携帯電話とのセット割を実現する形だ。この形態はソフトバンクと東京電力との提携と同様だが、auでんきではKDDIが主導する形で地域電力会社の自由化対応料金とは全く異なる料金プランを実現している点が大きな違いとなる。
なお、電力販売競争の激化が見込まれる関西地区では、利用料金8000円以上のキャッシュバック率を5%から12%に拡大するキャンペーンを、5月末までの申し込み分を対象に実施する。
関西・中国地区以外のエリアでは、KDDIが小売電気事業者として、独立系の発電事業者や電力卸取引所などから調達した電気を販売する。1月14日に提携が発表されたJXエネルギーは当面、首都圏での電力供給を担う。KDDIは、並行して関電、中国電力以外の地域電力会社との提携交渉を継続する考えだ。
※お詫びと訂正
初出時、「中部電力」という表記がございましたが、正しくは「中国電力」です。読者並びに関係者の皆さまにお詫びするとともに訂正いたします(本文は修正済みです)。