ドコモ阿佐美常務インタビュー「iPhone導入後のマルチOSサービス戦略に自信」

3キャリアのiPhone同時発売によって、競争軸はネットワークとサービスに移行している。長らくiモードを軸としたビジネスモデルを推進してきたNTTドコモは、スマートフォン時代になって転換を迫られ、新たなサービスモデルの確立に向けて苦闘してきた。その先頭に立ってきた阿佐美弘恭常務・スマートライフビジネス本部長は「マルチOS環境でのサービス戦略が確立できた」と自信をのぞかせる。


――9月20日にドコモから発売されたiPhone 5s/5cは、spモードメールをはじめ「dマーケット」や「dメニュー」などドコモの独自サービスにほぼ対応しています。これまでiPhoneを取り扱わなかったのは、アップルのビジネスモデルとぶつかるために独自サービスの対応が認められないことが大きな理由と見られていました。今回iPhone の導入に至ったのは、ドコモの方針が全面的に受け入れられたからですか。

阿佐美 一部報道で「最恵国待遇」「特別扱い」などと言われましたが、他社の契約内容を把握しているわけではないので、我々が「特別」なのかどうかはわかりません。ただ、「iモード以降、独自サービスに取り組んできたので、iPhoneでも対応したい」という我々のスタンスに対し、現実にこれだけの独自サービスをお客様に提供できているという事実が、アップルの回答といえると思います。

――フィーチャーフォンはドコモのiモードによるエコシステムでしたが、スマートフォンではAndroidであればGoogle Play、iPhoneであればApp Storeが必ず搭載されています。ドコモとしては従来の垂直統合モデルからの変革が求められたのではありませんか。

阿佐美 我々のように上位レイヤを手がけている通信キャリアは世界でも少なく、大半はネットワークだけを提供しているので、グーグルやアップルがエコシステムを提供しなければ魅力ある端末にはなりません。そこで、彼らのエコシステムと我々のエコシステムを共存させるような構造を作ることが、スマートフォン時代には必要になってくるわけです。Androidスマートフォンは、そうした発想の下でグーグルと開発してきました。

iPhoneの導入に際しても、アップルと同様の議論をしてきました。お客様から見ると、AndroidスマートフォンとiPhoneのどちらを選んでも、ドコモのサービスは共通してお使いいただけますし、機種変更してOSが変わっても継続してご利用いただくことが可能です。

――OSに関係なく引き続きサービスを利用できることは、コンテンツプロバイダーにも恩恵をもたらすことになります。

阿佐美 dメニューの中から推奨アプリをパッケージ化した「スゴ得コンテンツ」は、WebサービスでAndroidとiOSに78個提供されています。これらについてはOSを移行しても使い続けることができるので、コンテンツプロバイダーにとってもメリットがあります。

――つまり、「マルチOS」を視野に入れた取り組みをしてきたということですね。

阿佐美 そうです。Androidスマートフォンだけ提供していたときにはわからなかったかもしれませんが、iPhoneも発売したことで、我々の戦略が明確になったと思います。マルチOSという意味では、今年度中に発売するTizenにも対応する予定です。

図表 マルチOS環境でのサービス提供
図表 マルチOS環境でのサービス提供

月刊テレコミュニケーション2013年12月号から一部再編集のうえ転載(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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阿佐美弘恭(あさみ・ひろやす)氏

1980年3月早稲田大学理工学部(電子通信)卒業、同年4月日本電信電話公社入社。98年4月日本電信電話株式会社企画室担当部長。2003年9月エヌ・ティ・ティ ドコモ ユビキタスビジネス部担当部長。04年9月同マルチメディアサービス部担当部長。07年6月同コンテンツ&カスタマ部長。09年6月同執行役員コンシューマサービス部長。2013年6月同常務執行役員スマートコミュニケーションサービス部長。同年7月同常務執行役員スマートライフビジネス本部長、現在に至る

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