オールフォトニクス・ネットワーク(APN)への期待は、かつてなく高まっている。通信量と電力需要の大幅増が見込まれるデータセンター間接続をはじめ、新たな通信需要に対応する新型ネットワークとして、APNの果たすべき役割は大きい。政府の官民投資ロードマップも、2040年までにAPNへ5.9兆円を投じる目標を掲げる。
だが、普及には乗り越えるべき壁がある。サービス化されているAPNの多くは、新たな需要に応えるための専用網を前提としていることだ。「既存のサービスをないがしろにして、新しいサービスだけに対応するAPNでは普及しないのでは」と疑問を呈するのは、APRESIA Systems SE本部の渡辺純平氏だ。投資余力が限られる今、既存網とは別にAPNを構築・展開する負担は決して小さくない。
「APN専用網」では広がらない 法人VPNもFTTHもAPNも共存
端末からネットワークまで、すべての区間を光で貫く──。渡辺氏も、このAPNの構想自体の価値は高く評価する。超低遅延、低ジッター、高い安定性。得られるメリットは大きい。
一方で、光の波長数が有限であるがゆえに拡張性に限界があり、APN専用のネットワークと装置も必要になる。そんなAPNを、新たな用途のためだけに端から端まで作ろうとすると、サービスは高価になりやすい。「一足飛びに進んでしまうとAPNも普及しない」(渡辺氏)
そこで同社が提案するのが「マルチサービス収容型APN」だ。メトロ/アクセス網の1点に、APNと既存サービスの橋渡しをするポイントを作る。ここで、大きな光の束(コアネットワーク側)をいったん電気に変換し、サービス用途に応じた光回線(アクセス網側)へと振り分けることで、法人VPNやFTTH、モバイル、時刻同期といった既存サービスをAPNに収容できるようにする。
このAPNの理想と現実の結合点を担うプラットフォームが、「Apresia Flexible Optical Network(以下、Apresia FON)」だ。
既存サービスとAPNのそれぞれに専用装置と専用網が必要となれば、装置点数は増え、設置スペースを圧迫し、運用も複雑になる。Apresia FONは、これらを1つの基盤に集約(図表1)。装置と運用の一体化により、「ビット単価は下がり、APNを低コストに提供できる余地が生まれる」(渡辺氏)。
図表1 Apresia FONの差別化ポイント:マルチサービス収容が可能

Apresia FONは、エッジルーター「AOR(Apresia Optical Router)」、L2スイッチ「AOS(Apresia Optical Switch)」、伝送装置「AOT(Apresia Optical Transport)」の3種の装置に、「APNコンポーネント」と呼ぶ光トランシーバー群を組み合わせることで構成する。

エッジルーター+APN機能を持つ「AOR」

スイッチにAPN 機能を搭載した「AOS」

伝送装置+APN 機能の「AOT」
通信局舎のうち上位局にAORを、ユーザー収容側にAOSまたはAOTを配置する構成が基本だ。AOR/AOS/AOTには様々な機能を持つAPNコンポーネントを実装することが可能であり(図表2)、用途に応じて選択できる。
図表2 Apresia FONの差別化ポイント:柔軟な機能を提供するAPNコンポーネント

例えば、長距離トランシーバーを使えば、トランスポンダー装置を削減できる。ノキアが提供する「XR Opticsトランシーバー」は、周波数分割によって光のポイント・ツー・マルチポイント(P2MP)伝送を実現するもので、これを使えば、末端のGC局等に光スプリッターを置くだけで多くのモバイル基地局や分散データセンターを効率的に収容することも可能だ。GC局に高価・高消費電力な装置を置く必要がなくなる。光スプリッターは電源も不要で、一度設置すれば工事もほぼ発生しない。装置点数の削減を通じて、省電力化、省スペース化、そして省力化が同時に実現するというわけだ。
SE本部で製品企画を管掌する瀬戸康一郎氏は、「400G ZR+や800G ZRといった長距離・大容量伝送が可能なコヒーレント光トランシーバーを使うことで、メトロ網のAPN化がリアリティを持ってできるようになってきている」と話す。
PON OLTトランシーバーも面白い。OLT機能をトランシーバー化したもので、専用装置なしにFTTHユーザーを収容可能だ。こうした連携パートナーの技術/ソリューションを活用して、既存サービスの効率化・高度化を目指せるのもFONの魅力だ。
さらにAPRESIAは、FPGAを内蔵するインテリジェントトランシーバーの自社開発も進める。独自の回路を実装し、TS-1000のような日本固有のレガシー回線を継続収容したり、宅内のメディアコンバーターを直接収容したりといった、日本市場特有の課題にも応える。












