EUのファンディング制度の最新動向

NICT欧州連携センターにおいては、欧州域内のICT関連の各報道をフォローしているが、EUにおけるファンディング制度について、EUの研究開発支援枠組み「ホライズン・ヨーロッパ」への日本の準参加を含め、最近の動きがあったので、ICT分野の切り口から整理し概観したい。

EUでは、2024年12月、フォン・デア・ライエン氏を委員長とする欧州委員会の第二次体制(2024年~2029年)が開始された。同氏は新しい政治指針「欧州の選択」(2024年7月)で、欧州の中心にある民主主義の維持、そして、安全保障、気候変動、競争力強化という課題に向けて、連合(Union)の重要性を強調している。ICT分野について、同ガイドラインは、デジタル技術による生産性の向上の他、サイバーセキュリティの強化、民主主義と欧州の価値を守るためディープフェイク対策や外国による情報操作対策なども目標として含む内容となっている。

また、EUの新経済戦略「競争力コンパス」(2025年1月)は、欧州が競争力を取り戻すため、イノベーション(欧州と米国及び中国の間に開いた格差を是正)、脱炭素化と競争力強化の両立、安全保障・レジリエンス(欧州の戦略的自律のためEU域外への依存減少など)を三本柱とし、ICT政策に大きな影響を与えている。

EUのICT分野の研究開発及び実装・展開の助成支援は、研究・イノベーション活動を対象とする「ホライズン・ヨーロッパ」、EU内のデジタル変革(DX)を支援する「デジタルヨーロッパ」の他、国境を越えるネットワーク・インフラ整備を支援する「コネクティング・ヨーロッパ・ファシリティ」などのプログラムを通じて行われ、各種プロジェクトが実施されている。

日本との関連では、これまで交渉を実施していた「ホライズン・ヨーロッパ」への日本の準参加に関する協定交渉について実質合意に至ったと、2025年12月22日に日本とEUの双方からの発表があった。2026年中をめどに署名し、双方の承認を経て発効することになる。

「ホライズン・ヨーロッパ」のEUの2021年~2027年の研究開発支援枠組みの予算規模は7カ年度で総額955億ユーロであり、今回の合意は、第2の柱「グローバルな課題と産業競争力」への参画を対象とし、ICT部門は主にクラスター4「デジタル・産業・宇宙」が対象となる。署名に向けた移行措置により、日本の機関は2026年1月から、EUの2026年予算にひもづく公募に応募可能となる。

その後のEUのファンディング制度の動向として、2025年7月に発表されたEUの予算案となる多年次財政枠組み案(2028年~2034年)では、新経済戦略「競争力コンパス」の実現手段として「欧州競争力基金」の創設が提案されている。同基金は現在多数あるEUの助成プログラムの窓口を簡素化し、資金調達を迅速化して、民間投資と公的投資を呼び込むことを狙いとしている。新予算要求では、ホライズン・ヨーロッパの予算が955億ユーロから1750億ユーロへと大幅に増額されているとともに、一本化の中では防衛・宇宙分野のデュアルユース研究の推進が予定される点も注目される。

また、従来の公募枠による助成だけではなく、戦略的自立性を有するムーンショットプロジェクトも予定され、研究を証明や実装段階まで発展させることを目標としている。ICTに関しては、量子コンピューティング、次世代AI、データ主権、自動化された交通・モビリティといったテーマが事例として提案されている。この予算案の審議は2027年までかけて行われる予定である。

※本稿は、筆者の個人的見解である。

月刊テレコミュニケーション 2026年2月号の記事を再構成]

藤沼広一(ふじぬま・こういち)

国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)欧州連携センター長。総務省に入省し、2023年8月から現職

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