<連載>欧州ICTレポートAI、宇宙、161年目のITU

国際電気通信連合(International Telecommunication Union、ITU)は、そのルーツを1865年設立の万国電信連合に持つ世界最古の国際機関といわれ、2025年に創設160周年を迎えた。ITUは電信、電話、無線通信、モバイル、インターネットといった情報通信技術(ICT)の発展とともに歩み、標準化、電波資源の管理、国際協力などの活動を通じて、人々の生活、経済活動、デジタルトランスフォーメーションを支えてきた。

ITUが主催するAI for Goodは、161年目を迎えたITUが現代において担う取組の1つであり、AIのソリューション・知識、技能・能力、標準化・政策に焦点を当てた協力の取組である。年次の大規模会合AI for Good Global Summitは、2025年開催時には併催会合を含め169か国から1万1000人以上が参加した。通期的な取組としてAI Skills Coalitionがあり、産学官の協力でAI分野の人材育成に貢献する。

2024年から2025年にかけて、国連の舞台でのAI関連の議論に大きな進展があった。2024年に国連で採択された「グローバル・デジタル・コンパクト」及びこれを踏まえた2025年8月の国連総会決議により、AIの可能性、リスク、影響に関する科学的評価を含む報告書を作成する「AIに関する独立国際科学パネル」と、政府や全てのステークホルダーがAIガバナンスについて議論する「AIガバナンスに関するグローバルダイアログ」が設置された。これら「パネル」及び「ダイアログ」を支える事務局に、UNESCO等と共にITUが参加している。

2026年のAI for Good Global Summitと「ダイアログ」は、7月6日の週に併催する形で、ジュネーブ空港に隣接する国際展示場Palexpoで開催される。

ITUは宇宙分野も支える。ITUの主要任務の1つとして、周波数だけでなく、衛星軌道の管理を含む国際調整を担う枠組みが整備されている。周波数管理の国際条約である無線通信規則(Radio Regulations、RR)は120年前の1906年に初めて制定され、1963年の会合では宇宙無線通信に対応するための改正が行われた。

近年は衛星コンステレーションによる衛星数の増加が顕著で、欧州宇宙機関(ESA)によれば、2025年末時点で上空には約1万7000基の衛星が周回し、2025年だけで、300回以上の打ち上げにより約4000基が加わった。ITUへの周波数・軌道の申請数も増え、過去10年間で5.5倍に増加したという。2027年には、RRの改正を議論する大会議、世界無線通信会議(World Radiocommunication Conference、WRC-27)が上海で開催される。“WRC-27では議題の約80%が宇宙関係”とする表現も聞かれる。

2026年11月には、ITUの最高意思決定会合である4年に1度の全権委員会議(PlenipotentiaryConference、PP-26)が控える。4月28日から5月8日まで開催されたITU理事会は、PP-26を前に4年サイクルの最終年を総括する場となった。理事会期間中には、途上国の若手専門家を2年間ITUに採用してICT分野の次世代リーダーを育成するYoung Professional Program(YPP)の参加者による、最初の1年を終えた成果報告会も開かれた。日本はこのプログラムを支援している。

報告会でYPP参加者の1人は、ITUが扱う領域は、その重要性の高さゆえに、世代を超えて取り組む必要があると語った。11月のPP-26は、技術進展と共に歩み続ける161年目のITUが、次の4年間に向けた戦略と予算、ガバナンスを決めるスタートラインとなる。

※本稿は、筆者の個人的見解であり、所属組織の見解を示すものではない。

月刊テレコミュニケーション 2026年7月号の記事を再構成]

山内 匠(やまうち・しょう)氏

在ジュネーブ国際機関日本政府代表部一等書記官。2012年、総務省に入省し、2025年6月から現職

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