通信事業者が抱える「三重苦」への処方箋――顧客獲得競争による疲弊を止め、基盤で共創し、顧客体験で競う

契約数とARPUの伸び悩み、販促費の膨張、設備投資負担の増大──。通信事業者は、こうした“三重苦”に直面している。その突破口は、「共創領域」と「競争領域」の再設計にある。

日本の通信事業者は次に示す「三重苦」に直面しており、根本的な競争構造の転換点にある。第一に、契約数とARPU(1人・1月当たりの平均収益)が伸び悩んでいる(図表1)。

図表1 契約数およびモバイル端末保有率とMNO3 社のARPU 推移

図表1 契約数およびモバイル端末保有率とMNO3 社のARPU 推移
第二に、MNPにより顧客獲得競争が過熱(図表2)し、販促費が膨らんでいる。

 

図表2 MNP の実施件数の推移(単年および累計)

図表2 MNP の実施件数の推移(単年および累計)

 

第三に、5GネットワークのうちSub6帯やミリ波帯、そしてSA(Stand Alone)対応への設備投資負担が増加している(図表3)。

 

図表3 通信キャリア(MNO3社)の設備投資額の推移

図表3 通信キャリア(MNO3社)の設備投資額の推移

人口減少と市場飽和により、従来の成長前提モデルは崩れつつある。今後必要なのは、どこを“共創”してコストと担い手の制約を乗り越え、どこを“競争”して顧客に選ばれるかを明確に線引きし直すことにある。

結論から言えば、ネットワークや基盤サービスは通信事業者各社が横並びで共通化、サービスや顧客体験は各社で差別化すべき領域である。前者は協業・共用で投資効率と運用継続性を高め、後者は品質の見せ方と提案、サポートで勝負する。この役割分担に移ることができれば、顧客獲得競争の消耗を減らしつつ、5Gの価値を収益に結びつけられる。将来の6Gへの準備も現実的になるだろう。

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木村賢次(きむら・けんじ)

木村賢次(きむら・けんじ)

野村総合研究所(NRI) コンサルティング事業本部 ICT・コンテンツ産業コンサルティング部。2007年に京都大学工学部物理工学科卒業後、NRIに入社。一貫して情報通信やハイテク、放送分野の新規事業の調査、事業戦略、マーケティングを経験。大手通信キャリアのアライアンス担当出向を経て、現在は通信サービス、FinTechサービスの事業化支援や、経営改革支援等に従事

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