慶應義塾大学と古河電気工業(以下、古河電工)は2023年11月16日、総務省「グリーン社会に資する先端光伝送技術の研究開発」プロジェクトの一環として、空孔コアファイバーケーブルを慶應義塾大学新川崎タウンキャンパス内の「慶應義塾大学未来光ネットワークオープン研究センター」内に敷設し、複数のビル間を結ぶ超低遅延ネットワークキャンパスの実験を開始したと発表した。
慶應義塾大学未来光ネットワークオープン研究センターにおける空孔コアファイバケーブル網のイメージ
本センターは、最先端の光のメトロ/アクセス技術を研究する拠点として2023年4月に総務省の支援のもと開所し、自動車運転やリアルハプティクス(感覚通信)といった最先端のアプリケーションを備える。このたび敷設された空孔コアファイバーは、従来のガラスコア光ファイバーとは異なる光閉じ込め原理により、ガラスよりも屈折率の低い空孔のコアに光を閉じ込めて伝搬する新しいタイプの光ファイバー。従来のガラスコア光ファイバーと比較して30%以上の低遅延化と1.5倍の通信速度(信号伝送速度の限界である光速と同程度)を実現し、Beyond 5G時代に本格化する自動運転や遠隔ロボット(遠隔手術)、金融などの高速取引といったサービスの実現において極めて重要な超低遅延性を有する。古河電工グループのOFS研究所が、実用化の大きな課題であった従来の光ファイバーとの互換性の問題を世界で初めて解決し、かつ実用に近いレベルでケーブル化したという。これにより、本センターの超低遅延ネットワークキャンパスでの通信速度は従来の約1.5倍となり、世界で初めて実用に近い環境で、世界中の研究者達が空孔コアファイバーを用いたこれらのアプリケーション実験も行えるネットワークを構築した。
慶應義塾大学は、この超低遅延ネットワークを使い、複数のコンピュータリソースをタイトに結合したリソースプール実験、さらにはローカル5Gと組み合わせたネットワークコントロール型自動運転、感覚通信であるリアルハプティックス等の超低遅延性の応用実験を行う。また、古河電工は、本センターにおいて経時安定性や環境安定性なども含めて実際に敷設された空孔コアファイバケーブルの特性を評価し、同ケーブルの実用化を推進する予定だ。