<連載>SX/GX最前線日本各地から広がるSX/GX サステナブルシティの現在地

SX/GXの重要性が叫ばれる昨今だが、各自治体で取り組みが進んでいるとは言い難い。この状況を打破すべく、大阪や鳥取などで自治体を支援しようという動きが加速している。

環境省は今年8月、2024年度予算の概算要求を発表し、脱炭素社会の実現へ先進的に取り組む自治体への交付金を、前年度比約2倍の660億円計上した。政府主導の自治体SX(サステナビリティトランスフォーメーション)/GX(グリーントランスフォーメーション)に向けた動きが、一歩前進したとも言えよう。

一方、自治体のアクションは鈍い。国土交通省の調査によると、「2050年カーボンニュートラルに向け、目標が示されているか」という問いに対し、66%の自治体が「目標なし」と回答した。

この状況にブレイクスルーをもたらすべく、SX/GXに関する取り組みを大阪から発信し、脱炭素社会実現における先導的な役割を担おうとしている団体が存在する。OSAKAゼロカーボン・スマートシティ・ファウンデーション(OZCaF)だ。

OZCaFには各自治体はもちろん、大阪ガスやダイキン工業などの大阪に本社を構える大企業に加え、500以上の中小企業が加盟しているという。「民間企業1社で、あるいは行政だけが頑張っても世の中は変わっていかない。『公』と『民』が手を取り合って脱炭素化を進めていく必要がある」とOZCaF代表理事の田中靖訓氏は説く。

OSAKAゼロカーボン・スマートシティ・ファウンデーション 代表理事 田中靖訓氏

OSAKAゼロカーボン・スマートシティ・ファウンデーション 代表理事 田中靖訓氏

脱炭素化に成功するための3要素

脱炭素社会実現に向け、同団体は3つのキーワードを掲げる。

1つ目は、「重要性の理解」だ。「どうして脱炭素社会を目指さないといけないのかを理解しないと、そもそも活動に取り組めない」と田中氏は話す。SX/GXの重要性を啓発する各種セミナーや、YouTubeチャンネル「OZCaF TV」を立ち上げ、企業や自治体の脱炭素化に向けた取り組みをライブ配信している。

2つ目は、「現状把握」だ。「2050年までに温室効果ガス(GHG)排出量を実質ゼロにする」という目標と、自社の現在のGHG排出量の“距離感”を認識しない限り、ロードマップを描くことも難しい。例えば企業によっては、電気由来のGHGよりも、材料由来のGHG排出量が多いケースもある。自社の課題を見極めることが重要だ。

「『重要性の理解』と『現状把握』ができて初めて3つ目の『対策』が行える」と田中氏。OZCaF TVにGXソリューションを開発する企業をキャスティングし、情報発信などを行っている。

大阪の自治体の中でも、SX/GXを積極的に推進しているのが、堺市だ。同市は、西日本最大規模を誇る「泉北ニュータウン」を持つが、人口減少と高齢化が進んでいるという。子育て世代や若者を呼び込むため、泉北ニュータウンの中核地域である「晴美台エリア」において、すべての戸建て住宅を原則ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)にするなど、低炭素型のまちづくりを進めている。また、同エリアは豊かな緑に囲まれた地域でもあり、周辺環境と調和した外観デザインの向上といった団地の魅力化にも努めている。

大阪北部に位置する豊能町は、データ連携基盤を活用したGXへの取り組みを行っている。豊能町では、人口流出やコロナ禍での移動制限などにより、路線バスの利用者が減少。乗務員不足も相まって、従来の路線バスの事業継続が難しい状況になっているという。そこで同町は、公共交通の維持のため、オンデマンドバスの実証実験を開始。2024年度中の本格運用を目指すとのことだが、バスの乗車率が低いなどの問題があったという。「バスから得られた運行データを解析し、無駄なバスを減らしたり、より小さい車で対応するといった脱炭素の取り組みは、色々な自治体が始めている」と田中氏は解説する。

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