Wi-Fiの新規格が次々と登場している。2022年中に使用可能になる予定のWi-Fi 6EとWi-Fi HaLow(IEEE802.11ah)、2024年の実用化が見込まれるWi-Fi 7(11be)に加えて、また1つ「Wi-Fi 6 Release 2」(以下、Wi-Fi 6 R2)という規格が登場した。無線LAN 標準化団体のWi-Fi Allianceが2022年1月に発表した、Wi-Fi 6のマイナーアップデートバージョンである。
同月には、通信機器等の第三者認証試験・品質検証等を行うAllion Labsが、Wi-Fi 6 R2の認証試験機関としてWi-Fi 6 R2の認証プログラム(図表1)を開始した。少数ながら認証を取得した製品もすでに出てきている。
このWi-Fi 6 R2は、どのような規格なのか。
Allion Japan 技術統括部 技術課長の田中慶氏は「Wi-Fi 6Eと比べるとインパクトに欠ける」と話す。現行のWi-Fi 6 Release 1(以下、Wi-Fi 6 R1)に「機能が追加され性能も向上するが、それが活かされるユースケースは限定されるだろう」。
6GHz帯の追加によって超高速かつ安定した通信がしやすくなるWi-Fi 6Eのインパクトは非常に大きい。Wi-Fi AllianceはWi-Fi 6Eで創出されるユースケースとして「VR/AR(仮想現実/拡張現実)アプリケーション」「密集したマンション」「ワイヤレスオフィス」を追加しているが、対照的に「Wi-Fi 6 R2で新たに追加されたユースケースはない」(田中氏)。
Wi-Fi 6 R2とWi-Fi 6 R1でユースケースに変化はなく、主にIoT用途で「Wi-Fi 6 R2による改良がある」という控えめな見通しを示している。
ならば、Wi-Fi 6 R2は無視して構わない規格なのかといえば、そうとも言えない。無線LAN製品のメーカーが2023年3月1日以降にWi-Fi 6/6Eの認証を取得するには、Wi-Fi 6 R2への対応が必須となるからだ。2022年5月末時点で、Wi-Fi 6認証のうちWi-Fi 6 R2認証は5%以下(Allionでの試験実績)と出足は鈍いが、来年度から発売されるWi-Fi 6/6Eアクセスポイント(AP)や端末は、Wi-Fi 6 R2で追加された機能を実装したものになる。
前世代のWi-Fi 5(IEEE802.11ac)にも「Wave 2」という追加要素を加えたマイナーアップデートがあった。今回のWi-Fi 6 R2はそれに相当するものと考えてよいだろう。