私たちは現在、セルラーやWi-Fi、LPWAなど様々な無線通信を使っている。無線リソースは有限であり、それを有効活用するため、性能の異なる各種の無線技術を使い分けてきた。
「全体のキャパシティをユースケースに合わせたかたちでシェアし、最適化してきた。それと同じことが今後、空でも起こっていくだろう」
そう語るのは、ソフトバンクでNTN関連事業を統括する木村潔氏(サービス企画技術本部 グローバル通信事業統括部 統括部長)だ。静止衛星(GEO)と低軌道衛星(LEO)、成層圏プラットフォーム(HAPS)と3つのNTNソリューション提供を準備しているソフトバンクは(図表1)、複数の産業分野でユーザーとの共同検討をスタートさせている。例えば、海運や建築現場だ。
図表1 ソフトバンクのNTNソリューション
「これまでも衛星通信が使えたが、より高いスループットが出るLEOを提供すると発表した途端、リクエストが上がってきた。従来と同等のコストで快適に通信できるならぜひ使いたいと、多くのリクエストをいただいている」
ソフトバンクは2017年に子会社のHAPSモバイルを設立し、高度約20kmの成層圏を飛行する無人航空機を通信基地局として、空から通信サービスを提供する計画をスタートさせた。1基で直径200kmをカバーできる能力を活かして、LTE/5Gのカバレッジを広げるのが目的だ。
IoT用途も想定されるが、「手頃に飛ばせる時代になるまでは、今のスマホをより便利にするためにHAPSを提供するのがベターだと思っている」。と木村氏。2027年の商用提供開始を目指している。
HAPSモバイルはこの4月に、オーストラリアの不動産グループであるレンドリースと合弁会社を設立。広大な国土を持つ同国で、人口が少ない地域へのインターネット提供や、産業用IoTの用途を開拓する。
ソフトバンクグループが出資するOneWebは、LEOコンステレーションによる衛星インターネット通信サービスを計画している。第1世代のネットワーク構築のために予定していた648基の衛星のうち、400基余りを打ち上げ済みで、北緯50度以上の地域ですでにサービスを開始している。
ロシア-ウクライナ情勢の余波等で打ち上げ計画には遅延が生じているが、OneWebは今年3月、これまで同社の衛星打ち上げを担ってきた露Roscomosに代わり、米SpaceXと打ち上げに関する契約を締結した。「リカバリーに努めている状況だ。弊社としては、できるだけ早期にサービス提供できるように、継続してOneWeb社と協議している」