「三笘の1ミリ」の裏にAV over IP、ネットギアが映像伝送の最新トレンドを解説

現在、最も有名なAV over IPのアプリケーションはこれだ――。

ネットギアジャパンは2023年2月21日にIP映像伝送ソリューションに関するイベント「AV over IPパートナーサミット2023」を開催した。その冒頭、米ネットギア CEOのパトリック・ロー氏が示したのは、2022年に開催されたFIFAワールドカップ カタール大会の一コマ。日本代表がスペイン代表を破る決勝点につながった、いわゆる「三笘の1ミリ」の映像だ。

ゴールラインを割る寸前で三笘薫選手がボールを折り返したシーンを捉えたこの映像は世界中に配信され、VAR(ビデオ アシスタント レフェリー)の知名度を一気に高めた。VARとは、サッカーの試合において、主審による判定をビデオ映像を用いて確認・サポートする審判員のことだ。サッカーをはじめとする国際スポーツ大会やプロスポーツの中継放送・インターネット配信ではIPネットワークによる映像伝送が一般化しているが、試合進行を支えるVARにも「AV over IP」が使われているという。

米ネットギアCEOのパトリック・ロー氏、リチャード・ジョンカー氏、ローレン・マシア氏

(左から)米ネットギアCEOのパトリック・ロー氏、
AV over IP事業責任者のリチャード・ジョンカー氏、
リチャード・ジョンカー氏、ProAVデザインチーム本部長のローレン・マシア氏

AV over IPとは、映像・音声信号をIPパケットに変換してIPネットワークで伝送する仕組みのことである。従来は同軸ケーブルで作られていた映像音声伝送ネットワークをイーサネット等に置き換えることで、コスト最適化やネットワークのシンプル化、拡張性・柔軟性の向上といった様々な効果を得ることができる。

VARでは、スタジアム内に設置された複数のカメラからの映像を解析し選手やボールの位置等を認識。この映像伝送にAV over IPが使われている。ソニーと、そのグループ会社であるホークアイが開発・提供する「ホークアイ」がサッカーやテニス、ラグビー等で使われており、映像伝送ネットワークにネットギアの業務用AV向けスイッチである「ProAVスイッチ」も採用されている。

AV over IPで映像伝送・配信システムをシンプル化

特に近年は、従来型の映像伝送システムでは配信が難しかった4K映像等の高精細コンテンツが、AV over IPシステムで容易に伝送可能になることから普及スピードが加速している。業務用映像システムで長年使われてきたSDI(Serial Digital Interface)規格を用いる場合は、4K映像を伝送するために機材の入れ替えが必要なうえ、複数本の同軸ケーブルを用いるなどシステムの複雑化が障壁となっていた。

AV over IPシステムへ移行する場合も当然、機器やネットワークの更改を伴うが、汎用的な製品として普及しているイーサネットスイッチでシンプルに広帯域ネットワークが構築できることなどから、AV伝送のIP化が進展している。

AV over IP向けの機能を搭載したネットギアの「ProAV向けマネージドスイッチ」

AV over IP向けの機能を搭載したネットギアの「ProAV向けマネージドスイッチ」

加えて、AV over IPは映像制作・配信現場の業務効率化や映像サービスの高度化など様々な面に影響を及ぼしている。米ネットギアでAV over IP事業責任者を務めるリチャード・ジョンカー氏によれば、AV業界には「5つのトレンド」が見られるという。

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