奥志賀高原スキー場が60GHz無線で“極太”中継網「ゲレンデにもっとSNS動画を」

1990年代をピークに減少が続くスキー・スノーボード人口。日本生産性本部のレジャー白書によれば2020年は430万人と、ピーク時の1998年の4分の1まで落ち込んだ。昨今はスキー場の閉鎖も増加、異業種や外資の経営参画も増えるなど、業界はまさに変革期にある。

再生のキーワードはインバウンド、そして次世代を担う若者・子どもへの訴求だ。「インバウンドをいかに取り込んでいくか。また、子供たちに楽しさを伝えることも不可欠」と奥志賀高原リゾートの塚本健樹社長は語る。

奥志賀高原リゾート 代表取締役社長 塚本健樹氏

奥志賀高原リゾート 代表取締役社長 塚本健樹氏

比較的大規模なスキー場に限られるものの、海外スキーヤーからの日本の評価は高いという。雪質に加えて、日本特有の自然も大きな魅力だ。北海道のニセコ、奥志賀と同じ長野県の白馬、野沢などインバウンド誘致で成果を上げるスキー場も出てきている。「インバウンドのお客様に喜んでもらえるようなハード、コンテンツを考える」ことが業界のトレンドだ。

約1.6kmを60GHz帯で中継

こうした客層を呼び込むには、もはや自然とスキーの楽しさだけに頼ってはいられない。IT/通信サービスによる差別化が重要だ。奥志賀高原スキー場もこの春、その基盤として大容量の無線ネットワーク構築に踏み切った。ゲレンデ各所で高品質なWi-Fi環境を整備するのが第1の目的だ。

来客のピークが過ぎた2023年3月に、光ファイバー網が整備されている山麓エリアからゲレンデ、山頂を結ぶ無線LAN中継ネットワークを構築(図表)。合わせて、4カ所のリフト駅にWi-Fiアクセスポイントを設置した。構築を請け負った地元SIerのTOSYSと、今回導入した無線LAN機器の国内代理店を務めるソネットが連携して1カ月弱で工事を完了させ、3月末から稼働を開始している。なお、奥志賀高原スキー場は例年、5月初旬の連休まで営業している。

図表 奥志賀高原スキー場の無線LANネットワークの構成イメージ

図表 奥志賀高原スキー場の無線LANネットワークの構成イメージ

本格運用は来シーズンからを想定していたため、「フリーWi-Fiの告知は限定的だったが、それでも想定以上のお客様が動画投稿や視聴、SNSで使われている」と塚本氏は手応えをつかんでいる。山頂エリアでも多くのスキーヤーが利用しており、総トラフィックのうち3割をYouTube、6%をインスタグラムが占めるなど動画系SNSのアクセスが多い。

今回構築したWi-Fi環境の強みは、多数のスキーヤーがSNS動画投稿や視聴を行ってもびくともしないキャパシティにある。山麓のホテルと第2リフト降り場を、ソネットが取り扱うSiklu製の60GHz帯無線中継機「EtherHaul-600TX(EH600TX)」で接続(図中の区間①)。60GHz帯無線中継は広い帯域を使った高速通信が免許不要で使えるのが利点だ。約1.6kmを安定的につなぐために長距離用アンテナを使用した。

さらに、第2リフト降り場から約500m離れた第3リフト降り場も60GHz帯で接続(区間②)、その先のゴンドラ山頂駅、第4リフト降り場まではUbiquiti製の2.4GHz帯無線中継機「NSM2」で接続した。

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