「産業用ドローンと言うと物流のイメージが強いが、都市で物流に使える機体は1機種しかないし、ライセンスも必要なため時間がかかる。一方で、建設業ではドローン活用が“マスト”として進んでいる」
そう語るのは、米国ドローンメーカーのSkydioで日本代表を務める柿島英和氏だ。同社は2023年8月22日に記者向けの説明会を開催し、建設業におけるドローン活用の現状を説明した。
SkydioはNTTドコモが資本・事業面で提携するなど日本市場での技術検証も進んでおり、国内でも多くの事例が出てきている。柿島氏によれば、Skydioのドローンは建設業の「施工管理、高所等での点検、測量」の場面で広く活躍しており、同社の「自律飛行技術」がその大きな要因となっているという。
Skydioのドローンは、6つの搭載カメラで周囲360度を認識しながら障害物を自律的に回避する。そのため、GPSに依存せず、屋内でも安定飛行が可能な点がパートナーやユーザーから評価されているという。「オートノマスドローンであるため、マニュアル操作のドローンに比べてパイロット育成に時間とお金がかからない。電波干渉の影響も受けにくい」ため、導入後すぐに利用できる。建設業以外でも、送電設備やプラント等の点検にも活用されており、「NTTの鉄塔点検でも使われている」(同氏)。
この点を活かした事例が、鹿島建設の取り組みだ。山岳トンネル工事にSkydioドローンを導入し、同工事において非常に重要な作業である掘削面(切羽)の地質観察に活用している。
トンネルの掘削作業中は重機が複数台稼働しているうえ、岩盤崩落等の危険も伴うため、基本的に人の立ち入りは禁止されている。従来は、重機作業を停止してから切羽観察を行っていたため、安全性の確保と生産性とのバランスが課題となっていた。
そこで、Skydioドローンを導入し、「切羽直近までドローンを飛ばして高画質映像を撮影。その映像をリアルタイムに共有し、本社オフィスで有識者が判断できるようにした」(柿島氏)。経験豊富な有識者が掘削現場に立ち会わずともリアルタイムに観察できるうえ、掘削作業を停止することもなくなったことで安全性と生産性をともに大幅に高めることができた。
このトンネル工事以外にも、鹿島建設はドローン活用に積極的で、様々な建築現場のリモート確認や安全パトロールに活用し、省力化を実現しているという。