NTTが2023年6月12日に設立したNTTイノベーティブデバイス。NTT研究所の光電融合技術部門に、光電子部門の開発・製造会社であるNTTエレクトロニクスを統合(8月1日)して始動したこの新会社のミッションは、「光電融合デバイス」の早期事業化だ。
光電融合デバイスは、電気と光を使ってつながっているコンピューターとネットワークにおいて電気の配線区間を極力短くし、可能な限り光でつなぐ新デバイスだ(参考記事)。光は電気よりも早く、エネルギーも少なくて済むため消費電力も発熱も小さい。そのため、広域ネットワークやデータセンターなどICTインフラの高性能化と低消費電力化における切り札となる期待がある。
NTTの次世代基盤IOWNにおいても、光電融合は核となる技術だ。新会社は光電融合デバイスの開発・製造によってIOWN推進を後押しすることに加えて、その技術で半導体市場でのビジネスを拡大する役割を担う。
このNTTイノベーティブデバイスが2023年9月6日に記者説明会を開き、事業戦略と光電融合デバイス開発のロードマップを解説した。代表取締役社長の塚野英博氏は、「NTTエレクトロニクスの2023年3月期の売上が379億円。それを4桁億円にしたい」と話した。
これまでNTTエレクトロニクスが手掛けてきた光デバイスは通信、それも長距離伝送がターゲットだったが、光電融合デバイスによって「適用先をコンピューティング、あえて言えばコンシューマー領域まで広げていきたい」(塚野氏)という。
光電融合デバイスは、第1世代(COSA)がすでに実用化。第2世代(CoPKG)も商用化が間近の段階にある。
これらは共にネットワーク向けデバイスだ。
COSAは、光と電気の変換を行う光インターフェース機能を小型化した通信用モジュールである。機器開発・製造メーカーがCOSAを用いるには、デジタル信号処理を行うDSPを別途調達して組み合わせる必要があったが、第2世代のCoPKGはこのDSPを一体化したもの。光インターフェースのさらなる小型化・低消費電力化を可能にした。
そして、2025年度に商用化を計画する第3世代から、いよいよコンピューター内に「光が入っていく」(塚田氏)。信号処理・光回路、光エンジン(FAU)と呼ばれる機能まで一体化。この段階で、コンピューター内のボード接続用デバイスに光電融合技術の適用が可能になるという。