爆発的なトラフィック需要の増大に対応するため、光ファイバー伝送技術は日々進化を続けている。なかでも大きな期待を集める新技術が、「空間分割多重(SDM:Space. Division Multiplexing)」だ。
SDMは、いわゆるマルチコアファイバー(参考記事:6G支える「新型光ファイバー」が2025年実用化へ)を用いる大容量化技術である。
既存の光ファイバーは、光の通り道である「コア」が1つしかないシングルコアだが、1本の光ファイバー内に複数のコア(マルチコア)を持つことで、ファイバーあたりの伝送容量を飛躍的に高めることができる。理論的には、4コアなら4倍、12コアなら一気に12倍にもなる。
ただし、このSDMの実用化にはある課題があった。伝送容量の拡大と比例して、消費電力も際限なく増大してしまうおそれがあるのだ。
光信号は伝送距離に応じて減衰するため、中長距離伝送においては、数十kmおきに光信号を増幅する必要がある。この「光増幅器」は、シングルコアファイバーなら当然1つで済むが、マルチコアファイバーを使う場合には、光増幅器もコアの数だけ必要になる(下図表)。
つまり、従来技術のままであれば、12コアなら増幅器も12個必要で、消費電力も12倍になってしまうのだ。
これを克服する新技術を開発しているのが、NTTだ。そのアプローチは、1つの増幅器で複数コアを「一括増幅」すれば大容量化と省電力化を両立できる、というものである。
NTTアクセスサービスシステム研究所 アクセス設備プロジェクトの坂本泰志氏は「マルチコアファイバーがこれまで目指してきたのは大容量化。そこに、省エネルギー化という新たな付加価値を生み出せる」と話した。