「NTTに対する規制が後退することで地域の電気通信事業者が淘汰される。それによって地域の情報通信機能がなくなり、国民の選択肢が失われることを懸念している」
2023年10月31日にJCTAが開催した今年4回めの定例記者説明会において、塩冶憲司会長はそう切り出した。
10月19日に電気通信事業者や地方自治体らが連名で、総務大臣等へ提出したNTT法の見直しに関する要望書では、ケーブルテレビ(CATV)関連123社が賛同して反対意見を表明。同要望書で3つ示された「仮にNTT法が廃止された場合の懸念」には、CATV事業者が抱く危機感も大きく反映されている。
今回の要望書について説明したJCTA理事の小林直樹氏は、「地域事業者を含めた競争の進展を求めていきたい」と述べた。「独占的事業者、公の財産を承継した事業者、つまりNTTの活動を適切に制限しない場合には、独占企業による他社の排除が可能になる」とし、適切な競争環境の維持が必要と訴えた。
JCTAが説明する「NTT法見直しに関し生じる懸念」とは次の3つだ。
1つめは、「独占企業の市場支配と他社排除」だ。
NTTは、電柱や管路など電電公社時代に整備された全国規模の線路敷設基盤を承継している。NTT東西が保有するこれら設備の利用に関して、NTTドコモ等のNTTグループ会社が情報・条件面等で優遇されるなど、競争事業者との公平性の確保に懸念が生じるといった具体的な懸念を示している。
小林氏は、「最終的にNTTの分離分割の見直しが行われれば、地域事業者を含む競争事業者による線路敷設基盤の利用等が不透明化する」と指摘。公正な競争環境が阻害されることで、国民が、利用者料金の高止まりやイノベーションの停滞といった不利益を被る可能性があるとした。