「2010年頃のようなブームはもう来ないだろうが、実は2018年頃から新しい世代の会社が出てきて、そこに資金が集まり始めた。普及も静かに始まっている」
エネルギーハーベスティングの動向についてそう話すのは、NTTデータ経営研究所 社会・環境戦略コンサルティングユニットの竹内敬治氏だ。まさにブームの渦中にあった2010年に設立したエネルギーハーベスティングコンソーシアムの事務局長を務める。当時は日本でも関心が高く、展示会では関連ブースに黒山の人だかりができていた。
だが、ブームを作った技術ベンチャーは相次いで倒産・撤退。有力プレイヤーのほとんどが2017年までに姿を消した。「発電・蓄電デバイスを量産して売る会社ばかりで、そのビジネスは成り立たないことがわかった」(同氏)
その後、2018年頃から台頭してきたのが、「発電デバイスではなく、エネルギーハーベスティングで動くソリューションを販売する会社」だ。IoT市場で今、この第2世代が躍動し始めている。
エネルギーハーベスティング(以下、EH)とは、周囲の環境から微小なエネルギーを収穫(ハーベスト)して電力に変換する技術だ。光や熱、振動、電磁波といった環境中のエネルギーを電力に変えるもので(図表)、「環境発電」とも呼ばれる。
図表 エネルギーハーベスティングとは
主用途は、モバイル端末やIoTセンサー等の自立電源だ。電源・電池なしで稼働し続けられるようになるため、デバイスの小型・軽量化が可能になり、かつ電池交換等のメンテナンス負荷も排除できる。
太陽光発電や風力発電、地熱発電等の再生可能エネルギーも環境中のエネルギーを電力に変えるものだが、EHは大規模な発電設備は含まない。発電量はmW/μWレベルと小さく、エネルギーとしての価値ではなく「センサーを動かしてデータを取り、無線で飛ばすことで情報としての価値を生む」(竹内氏)技術だ。
同氏が言う新世代の企業たちは、まさにこの“情報としての価値”にフォーカスしている。「お客は、発電方法は知らなくていい。ずっと情報を取り続けるソリューションがほしい。また、蓄電デバイスが進化し、低消費電力のICや無線機、センサーも出てきて、システムを作る技術的ハードルが下がったことも大きい」