2030年、ローカル5Gが社会に浸透し、当たり前に使われる時代が到来しているとすれば、私たちは2023年を特別な1年として振り返ることになるかもしれない。ローカル5Gの社会実装は、「共同利用」制度ができたあの年を起点に始まったのだと。
2023年9月に解禁された共同利用は、2021年末から総務省で検討が始まった「ローカル5G制度の柔軟化」の中でも、メインに位置づけられた施策だ。「自己土地」「他者土地」の利用形態に加えて、複数のユーザーが1つの基地局をシェアして、自己土地相当とみなされるエリアでローカル5Gを使えるようにする仕組みである。
この新制度が市場にもたらすインパクトはかなり大きい。ローカル5Gを活用してサービスを展開する電気通信事業者のビジネスモデルを革新する可能性があるのだ。
9月29日には早くも、同制度を活用した無線局の商用免許が交付されている。第1号免許を取得したのは、三重県津市に本拠を置くケーブルテレビ(CATV)事業者のZTVだ。そして10月には、愛媛CATVが第2号となった。いずれも、地域BWAから積極的に無線ビジネスを推し進めてきたCATV事業者である。
ZTVは11月から、共同利用制度を駆使したコンシューマー向けサービスも開始している。
同制度の解禁前は採算性などの理由から断念してきたFWA(固定無線アクセス)サービスを津市でスタート。これまでも地元企業や自治体とローカル5G実証事業を行ってきたが、「費用をいただく本格的なローカル5Gサービスは、共同利用制度を使った今回が最初だ」と、取締役 新事業推進部長の朝熊淳氏は話す。「ZTVとして収益を上げることはもちろんだが、加えて、CATV業界全体の無線ビジネスの推進にも貢献したい。そのモデルケースを作っていく」と意気込む。
すでに2局目も準備中で、「年間で数十局」を展開していく計画だ。