インプレッサやフォレスターなどで知られる自動車メーカーのSUBARU。高い走行安定性とハンドリング性能を実現する「水平対向エンジン」や、運転支援システム「アイサイト」等の独自技術で他メーカーと一線を画してきた。
SUBARUは同社の企業城下町である群馬・太田市に主要拠点を構えるが、そこから約30km離れた栃木・佐野市にあるのが、技術開発施設「スバル研究実験センター(SKC)」だ。自動車の挙動や安全性に関する評価を行っている。
北海道・美深には、雪道や凍結路等での走行試験を目的とした「スバル研究実験センター美深試験場」を有している。2017年には高速道路や市街地路を模したテストコースを新設。2020年にはソフトバンクと共同で、5G NSAとセルラーV2X(Vehicle to Everything)を活用した、自動運転車の合流支援に関する実証実験を行うなど、安全運転支援や自動運転等の試験も実施している。
そしてSUBARUは今年8月、美深試験場にSub6(4.8GHz帯)・SA方式のローカル5Gを導入し、走行する他車両のデータを基に専用サーバーを介して自動運転車へ走行指示・制御を行う「協調型自動運転」の実証実験を開始した。完成車メーカーのテストコースへのローカル5G導入は、国内初の事例になるという。
美深は都市部と比べて通信インフラが整備されておらず、4G/LTEが今も一般的だという。そのため、これまで同社は、4G/LTEを活用した自動運転の実証・技術開発を行ってきた。4G/LTEでもエンドツーエンドの遅延時間を数十ms程度に抑えることは可能だが、自動運転ではより低遅延かつ高信頼な無線通信が求められる。そこで期待が大きいのが、5G専用のコアネットワークを用いる5G SAだ。
SUBARU 技術研究所 技術開発1主査3 主査の小山哉氏は、「一般論として、将来的な自動運転の実現には、5G SAへの期待も大きい。SUBARUが研究開発を行う場合、5G SAの展開が進んでいる首都圏は交通量も多く、現時点で実際の道路環境にて自動運転の実証を行うのは難しい。まずは美深試験場にローカル5Gで“ミニキャリア環境”を構築し、5G SAでできることを見極めていきたいと考えた」とローカル5G導入の狙いを話す。