海上に浮かぶデータセンターが始動 日本郵船の海運技術で新市場開拓

データセンター業界は現在、深刻な課題に直面している。大規模なデータセンターを新設しようとすると、電力供給源の確保に数年規模のリードタイムがかかる。用地確保も難しく、場合によっては、住民の反対運動が起きることもあるのが現状だ。

こうした課題を解決するために、日本郵船は洋上データセンターの実現に向けた取り組みを行っている。海であれば陸上のような用地や電源の制約が少なく、より柔軟な立地が可能になる。

横浜実証での洋上データセンターは、海上に浮かぶ浮体構造物の上に、コンテナ型データセンター、太陽光発電設備、蓄電池を搭載した施設だ(図表1)。日本郵船の大東鷹翔氏は、「洋上データセンターの基本的な構成は陸上とほぼ同じ。だが、海上に浮かべることで、海水を冷却に使うことができる、再エネを得やすい場所を選べるといった利点が生まれる」と説明する。

図表1 実証実験での洋上データセンターの構成

図表1 実証実験での洋上データセンターの構成

電源と冷却で陸上DCを上回る

まずは洋上データセンターの最大の特徴である冷却方式と電源供給について、より具体的に見ていこう。

洋上データセンターでは、海水を汲み上げて熱交換器を通すことで、データセンター内を循環する真水を冷やす。その冷却された真水を二次ループ、三次ループでサーバーなどのIT機器を格納する空間(データホール)に送り込む仕組みだ。データホール内部には陸上のデータセンターと同様の設備が入るが、その外側のファシリティ部分で海水冷却を活用する。これからのデータセンターはAI処理の増加により発熱量が急増し、水冷時代になると言われているが、「発熱量の処理ベースにおいて水冷と空冷の割合で水冷が高くなるほど、海水冷却を活用する洋上データセンターは大きな優位性を発揮する。海水は豊富にあり、陸上のように冷却水の確保に苦労することがない。PUE(電力使用効率)は陸と比べてとても低い値を想定しており、冷却に要する電力を大幅に削減できる」と日本郵船の森福将之氏は説明する。

日本郵船 イノベーション推進グループ 先端事業・宇宙事業開発チーム 課長代理 森福将之氏

日本郵船 イノベーション推進グループ 先端事業・宇宙事業開発チーム 課長代理 森福将之氏

電源については、浮体構造物の上部という広いスペースを活用できる点が大きい。陸上の場合、太陽光発電パネルは建物の屋根に設置するため、屋根の面積だけではなく、形状にも制約されるが、洋上では浮体構造物の上部全体を太陽光パネルで覆うことができ、パネルの配置も自由度が高い。さらに、将来的には洋上風力発電設備の近くで稼働させる選択肢もある。「洋上風力発電設備は沿岸から離れた場所に建設されることが多いが、そこに洋上データセンターを置けば、発電した電力を送電ロスなく使える」と大東氏は話す。このように、浮体構造物に再エネ設備とデータセンターを一体化させることで、ゼロエミッションも視野に入る。陸上のように、送電網からの電力供給を待つ必要がなく、再エネを得やすい場所を選んで設置できるのが強みだ。

こうした電源と冷却の仕組みの特徴により、洋上データセンターは陸上と比較して複数の優位性を持つが、最も大きいのはOPEX(運用費)の大幅な削減だ。海水を冷熱源に使えるため、冷却に要する電力を大幅に削減できる。

また、構築リードタイムの短縮も大きなメリットだ。陸上は場所によって地盤や形状が異なるが、海なら条件がほぼ同じなので、工場で浮体構造物を量産できる。海上に浮いているため地震のリスクも少ない。

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