NTTは2026年10月27日、利用者の発言の背景や状況を理解し、より適切な応答を生成する「高EQ対話知性技術」を開発したと発表した。
EQは「感情的知能指数」を意味し、自分や相手の状況を理解したうえで適切に振る舞う能力を示す。今回の技術では、AIの応答をEQの観点から評価・改善し、利用者へ何をどのように伝えるかを調整する。
NTT人間情報研究所 デジタルツインコンピューティング研究プロジェクト 主任研究員の永徳真一郎氏と、研究員の横山怜汰氏が技術の仕組みや評価結果を説明した。
横山氏は、生成AIが情報を提示するツールから、日常的な相談相手へ変わりつつある一方、「AIが『相手が聞きたい言葉』へ寄り添いすぎ、誤りや有害な選択まで肯定してしまう『シコファンシー(sycophancy、迎合)』が課題となっている」と指摘した。
スタンフォード大学とカーネギーメロン大学の研究では、複雑な人間関係の悩みに対し、AIは人間より約50%多く相談者の行動を肯定した。相談者側に問題や不適切な行為がある事例でも、47%で相談者を肯定、正当化したという。
中核となるのが「高EQ発話最適化技術」である。
NTTは、人間のEQに関する研究を参考に、AIに必要な能力を「対話相手の背景を理解する」「対話相手に寄り添う」「理解した内容を応答に生かす」「対話相手の社会的関係を考慮する」の4つに整理した。
人が4つの観点からAIの発話を評価したデータを使い、ファインチューニングや強化学習によって、LLM(大規模言語モデル)の評価能力を高める。LLMが自身の応答を評価し、EQの高い発話を生成するためのプロンプトを改善する仕組みだ。
例えば、利用者が「転職しようかな」と話した場合、従来のAIは「それはいいですね」と意向を肯定し、次に希望する仕事を尋ねる。
高EQ発話最適化技術の適用後は、転職を大きな決断として受け止めたうえで、「今、どのような気持ちなのか、少しだけ教えてもらえますか」と問いかける。転職を考えた背景を確認してから、対話を進める。
横山氏は、「発言内容に合う応答を生成するだけでなく、発言の背景や状況まで踏まえ、応答の内容と伝え方を評価・改善する」と説明した。
