AI予算の消費が、企業の想定を大きく上回るペースで進んでいる。アカマイ・テクノロジーズが2026年11月4日に開いた「企業向けAI統合管理の最新動向」に関する説明会で、シニアテクニカルソリューションアーキテクトの森祐孝氏は海外の事例を挙げ、その深刻さを示した。
例えば米Uberは、年間のAI予算をわずか4カ月で使い切り、Claude Code、Cursorなどツールごとに1人当たり月1500ドルの上限を設けたという。米マイクロソフトでは、「1人が1カ月で2万8000ドルを消費した例が報じられた」(森氏)。2026年7月までに全部門がトークン予算の上限を設定し、デフォルトモデルもより安価なものへと切り替えた。

1日に450億トークンを消費する米AT&Tは、キャッシュ対応ルーティングと通信特化の小規模モデルの併用で、AIコストを最大90%削減したという。
また、アクセンチュアは、AI消費の大半がエンジニア以外によるもので、主因はPDF変換などの事務作業によるものと分析。2026年10月から、Claudeについて、1人当たり月29ドルを上限とした。
森氏によれば、各社の対応は、上限を設けて利用を制限するか、利用量を抑制する仕組みで適正化するかの二手に分かれ、どちらもAI利用の「測定」が前提になる。
さらに同氏は、「日本企業にはコストが膨らみやすい固有の事情もある」と説明した。AIの利用料はトークン数で決まるが、日本語は英語より細かく区切られやすく、同じ内容でも請求額がかさむ。加えて、定額プランが減り、従量課金が主流になりつつある。例として、GitHub Copilotは従量制へ移行し、Anthropicは、エージェント利用をサブスクリプションの対象外としていることを挙げた。
アカマイによれば、モデル単価が下がっても、こうした問題は解決しない。モデル単価は3年で約1000分の1、直近12カ月でも約80%下落したが、その一方で利用量は12カ月で10倍に増えたという。
森氏は、蒸気機関の効率が上がっても、石炭の消費はむしろ増えたという、19世紀の「ジェボンズのパラドックス」と同じ構図だと指摘。「安価なモデルへの乗り換えや値下げ交渉だけでは効果が薄く、呼び出す量そのものを減らす仕組みが必要だ」と説明した。
