野村総合研究所(NRI)は2025年12月16日、「2030年代に向けて、ICTはビジネスと生活をどう変えるのか?」をテーマにしたメディア向け説明会を開催。同社 ICT・コンテンツ産業コンサルティング部 シニアプリンシパルの木村賢次氏が「テレコムの未来」について提言を行った。

同氏は説明会の冒頭、国内の携帯電話契約数や通信ARPUがここ数年で頭打ちになっている現状を指摘。加えて、顧客獲得競争による販売促進費の膨張と、ネットワークの設備投資負担の増大が重なり、通信事業者は“三重苦”に陥っていると警鐘を鳴らした。この状況を打開するために、通信事業者は「共創領域」と「競争領域」を明確に見極めることが必要になると述べた。
その共創領域の1つが、「ネットワーク(通信インフラ)」だ。NRIによれば、2024年度の通信事業者(NTTドコモ・KDDI・ソフトバンク)によるネットワーク設備への投資額は、2023年度比で約9%増加している。6G時代の到来により、設備投資額はさらに増大していくと予想される。
アンテナや中継装置を共用するインフラシェアリングにより、設備投資を抑えようとする動きがすでに本格化しているが、「アンテナや無線装置に加え、周波数帯を複数事業者で共用する『MOCN』(Multi-Operator Core Network)が今後さらに普及していくと考えられる」と木村氏は展望した。同氏によれば、米国ではCBRS(市民ブロードバンド無線サービス)と呼ばれる共用周波数帯を用いたMOCNが進展しているという。

また木村氏は、韓国では通信事業者各社が個別に開発していた本人確認サービスを統合し、共通の認証基盤として使われている事例を紹介。あわせて、通信事業者各社が出資する事業体が運営するアプリマーケット「ONE store」にも触れ、「『プラットフォーム』も国内の通信事業者間で共通化できる世界観を描けるはずだ」と期待を寄せた。