「ファーウェイは20年以上にわたって光通信技術の研究開発に注力、OTN(光伝送規格)の標準化でも多くの貢献をしています。次世代の固定通信網となる『F5G』の仕様策定にも参画し、そのコンセプトを満たす製品をいち早くお客様にお届けすることで、企業・社会のデジタル化・インテリジェント化に貢献していきたいと考えています」
ファーウェイ・ジャパンで法人向けビジネスを担当する曾小虎氏は、同社の光ネットワーク製品戦略を、こう説明する。
F5G(Fixed 5th Generation)は、ETSI(欧州電気通信標準化機構)が策定した次世代の固定通信ネットワークの技術仕様だ。2020年にESTIがF5Gを公開。2023年11月にはF5G Advancedをリリースして更新が続けられている。ファーウェイは、このF5Gで想定されているオール光ネットワーク構築に必要な製品・ソリューションを早期に提供することで、通信キャリアやISP・OTT事業者、企業の新たなニーズに応えていく。
曾氏によると、F5Gでは(1)さらなる高速・大容量化、(2)オール光化、(3)ユーザー体験の向上という3つの方向で固定網の進化が図られるという。この3つの進化に沿って、F5Gに向けたファーウェイの製品展開を見ていこう。
図表 ファーウェイが提供するエンド・ツー・エンドのオール光ネットワークソリューション
(1)の高速・大容量化の実現手段としてまず挙げられるのが、アクセス回線に用いられるPON(Passive Optical Network)の高度化だ(図表の①)。
日本でも最大10Gbpsの光アクセスサービスが普及し始めているが、世界的にもXGS-PON(以下10G PON)が主力となっており、将来的には、50G PONの導入が見込まれている。ファーウェイでは「2023年の標準化完了を受け、2024年に50G PON製品を発売する計画」(曾氏)だ。
ファーウェイの50G PONソリューションで特筆されるのが、現行のG-PONや10G PONとの共通運用と50G PONへの移行を容易にする仕組みが実装されていることだ。
通信キャリアに広く採用されているファーウェイ「OptiXaccess」のOLT(Optical Line Terminal:光回線終端装置)製品では、ボードに互換性を持たせることで、G-PON用のSFPモジュールを10G PON用モジュールに差し替えるだけで10Gbpsに高速化できる「Flex PON」と呼ばれる機能が実装されている。次世代規格への移行コストが抑えられ、混在環境の運用も容易になる。ファーウェイは、このFlex-PONで50G PONをサポートする。
2024年に発売する50G PON 対応モジュールもG-PON、10G PONをサポート。これらを組み合わせて使うことで、1本の光ケーブルで最大62.5Gbpsの伝送容量を実現するという。
もう1つ、光ネットワークの高速・大容量化に欠かせないのが、様々な場所に配置されたOLTとデータセンター等を結ぶバックボーン回線の光伝送装置に実装されるWDM(波長分割多重)技術の高度化だ(図表の②)。
ファーウェイはすでに、光1波長当たり800Gbps伝送が可能なWDMを実用化しているが、「2024年に1波1.2Tの商用化、2025年に1波1.6Tの商用化を予定している」(光ネットワークソリューションセールス部 松居省吾氏)。WDMの高速化の手法については「一般的なボーレートの向上だけでは限界がある。そこで、2019年に業界初の(広帯域化に対応した)Super Cバンド対応製品を商用化し、現在はSuper Lバンドも利用可能にして伝送帯域を大幅に広げ、高速化を実現している」。