台湾独自のLPWA「Super TaiRa」が日本で本格展開を開始する。
2023年12月、同規格を開発したK-Best Technologyが日本法人を設立、国内における認知度向上や顧客開拓、ユースケース掘り起こしに取り組み始めている。
Super TaiRaとはどのような規格なのか。
「一言で言うと、LoRaの変調方式に使われているチャープスペクトラム拡散の特性をさらに改善した無線方式」と話すのは、日本法人で代表取締役社長を務める慶野文敏氏だ。
チャープスペクトラム拡散とは、時間とともに周波数が増加・減少するチャープ信号を用いることで、元の周波数帯域の数十倍も広い帯域に拡散して送信する技術。LoRaは変調に同方式を用いることで、低消費電力でありながら、10km程度の長距離通信を可能にしている。また、他のLPWAと比べて電波感度が高く、干渉防止能力に優れる。
ただ、「センサーのような少量のデータは問題ないが、大量のパケットデータを送ろうとすると非常に時間がかかる。長距離になると、パケットエラー率(PER)が高くなることも課題」と慶野氏は説明する。
Super TaiRaは、チャープスペクトラム拡散での電波感度や干渉防止能力を最大限に強化するとともに、フェージング(電波が伝わる際に反射や回折、干渉により受信レベルの強弱に影響を与える現象)による伝送損失の改善を図ることで、電波の透過力を高め、PERの低減化を実現している(図表1)。「そのため、チャープスペクトラム拡散用ICチップに搭載されているソフトウェアおよび周辺ハードウェアなどすべてを見直した」と慶野氏は述べる。
図表1 Super TaiRaとLoRaの違い
K-Best Technologyが行った実験では、Super TaiRaを採用した通信モジュールは、従来のLoRaチップを採用した製品と比べて通信中のPERを40%以上低減できることが確認されたという。再送処理が減ることで、スループットも大幅に向上する。これにより、微弱な電波でも安定した高速通信を行える。地下深い場所や鉄箱内のメーターやセンサーのデータをはじめ、音声や動画の送受信も可能だ。
また、Super TaiRaは主に防衛用途で開発されてきた経緯から、暗号化方式AES(Advanced Encryption Standard)の中で最も安全性に優れた軍用レベルのAES256など、高いセキュリティ機能を備える。このため、「データをハッキングされるといったリスクも少ない」(慶野氏)という。