5GHz帯無線LANの「上空利用」の制度化に向けた技術的条件の検討がスタートする。
2024年6月19日に情報通信審議会が開催した「5.2GHz帯及び6GHz帯無線LAN作業班(以下、作業班)」第11回で、5.2GHz帯の上空利用を可能にするための技術的条件の検討を開始することが発表された(関連記事:6GHz帯Wi-Fiの周波数拡張は24年度末までに検討、AFCによる共用が焦点に)。
背景にあるのは、ドローンをはじめとする無線通信の上空利用ニーズの高まりだ。5GHz帯を使う無線LANは高精細映像の送受信が可能なことから、橋梁等のインフラ点検や空撮といった利用ニーズがある。
また、ドローン以外にも、高所クレーンや無線通信の中継といった利用法も想定されている(上図表)。こうした新たな利用ニーズに応えるため、5GHz帯の上空利用を可能にするための技術的条件の検討を進める。
日本国内では現在、5GHz帯無線LANのうち5.2GHz帯と5.6GHz帯は条件付きで屋外での使用が可能だが、上空利用についてはいずれの帯域においても利用不可となっている。作業班では、5GHz帯無線LANと既存無線局との周波数共用の可能性を整理し、上空利用に係る技術的条件を検討する。
今回の検討は、5.2GHz帯を対象に進められる。5.3GHz帯と5.6GHz帯は、レーダー波を検出した場合に無線LAN側で干渉を回避するDFS(Dynamic Frequency Selection)機能の具備が必須であることが理由だ。レーダー波の検出時には通信が一時的に断絶するため、「ドローンでの利用には支障が発生する」(事務局)。
その5.2GHz帯については、ITU決議229において屋外利用条件が提示されており、日本では現在、屋外(地上)において次の利用条件を設けている。(1)「5.2GHz帯高出力データ通信システム」の技術基準適合証明等を取得した機器であること、(2)告示に示す「区域内」でのみ利用するものであること、(3)事前に無線局の登録を受けているもの(登録局)であること、の3つだ。
このうち(1)に関しては、衛星への与干渉を抑えつつ、1台でも多く利用できるよう仰角制限を採用している。ITUが規定する4つのオプションのうち、仰角に応じて最大ERIP(送信電波の強さ)に制限を設けるOption1(上画像)で、上空側に強い電波が出ない装置が技適の対象となる。なお、欧州および英国は、仰角によらず最大平均電力200mWでの屋外使用を許可するOption4を採用している。
また、(2)に関しては、気象レーダーに影響を与えないよう「開設区域」を設定し、レーダーと無線LANの必要な離隔を確保している。
5.2GHz帯の上空利用を可能にするためには、これらの条件を見直し、上空利用に適した条件及び周波数共用条件の検討が必要となる。