めざせ“自動充電”シティ ワイヤレス給電は都市をどう変えるか?

現代人は常に“充電”に悩まされている。就寝前にスマホやPCに電源ケーブルを挿し忘れ、翌日後悔した経験は誰もが持っているだろう。

スマートシティやスマートビルが本格化した場合、その運用者も充電の悩みを抱えることになるだろう。街・建物にばらまかれた無数のIoTデバイスの電源問題だ。電源ケーブルの配線には多大なコストが掛かる。だからとバッテリー駆動にしたところで、毎日充電する必要はないとしても、電池残量の管理と充電・交換には途方もない手間がかかる。

これは、スマート化が進む工場、オフィス、ビル等すべてに共通する課題だ。令和2年版情報通信白書によれば、2022年には92.7億台の産業用IoTデバイスの普及が見込まれている。

「電池で数年もつ」は幻想?

IoTデバイスに不可欠な通信機能は無線化されつつあるが、電気はいまだに配線あるいはバッテリー充電・交換が欠かせない。ワイヤレスIoTを本当に飛躍させるには、この課題を解決する必要がある。

センシングと通信の頻度を極力抑えることで“充電・交換なしに数年使える”とするIoTセンサーもあるが、これは実際の運用に耐え得るのか。スマートシティ/スマートビル関連の研究開発を進める大成建設 技術センター 先進技術開発部 新領域技術開発室 電波伝搬・ロボット制御チームリーダーの遠藤哲夫氏はこう語る。

「大規模なセンシングによって大量のデータを収集し、照明や空調設備を制御して快適な環境が作れる。来客の動向を把握してテナントの売上向上につなげるといった仕組みを作るには、多くの自律型センサーが必要だ。例えば人を検知するには、1秒に1回の検知が必要。数カ月でバッテリー充電・交換が必要になる」

同社は技術センター内のZEB(Net Zero Energy Building)実証棟で、こうしたスマートシティサービスの検証を行っており、「10㎡に1個程度のセンサーが必要になる」(同氏)。人手による充電・交換は現実的でなく、現状では照明から配線して電源を取るしかない。

この電源問題解決の決定打となり得るのがワイヤレス電力伝送(WPT:Wireless Power Transfer)だ。スマホの“おくだけ充電”が普及し始めているが、IoTデバイス向けに期待されているのが、マイクロ波を使って10m程度まで離れたデバイスに電気を送ることができる「空間伝送型WPT」である。

これを用いて、送電装置をビル内に巡回させてIoTデバイスの充電を自動化しようとする取り組みが始まっている。

また一方で、スマートシティ/ビルを移動するモビリティロボットや、センサーの塊である電気自動車(EV)の充電問題を解決し、その運用効率を高めようとする動きもある。それら最新動向を紹介しよう。

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