“WX”に向けWi-Fi HaLow・Wi-Fi 7の実力アピール AHPC・Wi-Bizブース

「ワイヤレスジャパン×ワイヤレス・テクノロジー・パーク(WTP) 2025」では、昨年に引き続き802.11ah推進協議会(AHPC)と無線LANビジネス推進連絡会(Wi-Biz)が合同でブースを構えている。今年のテーマは「WX(ワイヤレストランスフォーメーション)」だ。

AHPC・Wi-Biz合同ブースの全景

AHPCとWi-Bizは今年も合同でブースを出展

Wi-Fi HaLowは商用化3年目 普及に向けエンドポイント機器の開発推進

“Wi-Fi版LPWA”として注目されるWi-Fi HaLow(IEEE 802.11ah)の普及を推進するのがAHPCだ。Wi-Fi HaLowの国内商用化から3年目を迎え、AHPCは「Wi-Fi HaLowが日本の生活を豊かにする」というビジョンを掲げた「Future Map」をブースに掲示し、製品やソリューションを紹介している。

ブース内でひときわ目を引いたのが、電子ペーパーを搭載したスマートバス停だ。時刻表データの更新をワイヤレスで行うことで省力化を図るものだが、ここにWi-Fi HaLowの強みが活きる。AHPCで広報・普及TGを務めるメガチップスの東郷大輔氏は、「地方のバス停は乗降客がいないことも多く、バスが通過するだけのケースもある。Wi-Fi HaLowなら走行中のバスからでもデータを送信できる」と説明。およそ1kmの通信距離と数Mbps程度のスループットによる画像伝送というWi-Fi HaLowの特性が、この用途にマッチしている。

Wi-Fi HaLowによるデータ更新に対応したスマートバス停

Wi-Fi HaLowによるデータ更新に対応したスマートバス停

一方で東郷氏は「センサーなどエンドポイント側の対応機器がまだ少ないことが課題」と明かす。その解決のために、AHPCは台湾メーカーと連携して通信モジュールやアクセスポイント、カメラなどの開発を推進しており、ブースにも多数の対応製品が並んだ。国内でも村田製作所がWi-Fi HaLowモジュールの生産を開始しており、今後の対応機器拡充に期待がかかる。

アクセスポイント、カメラなどのWi-Fi HaLow対応機器。左下の青いデバイスはRS-485に対応したWi-Fi HaLowブリッジ

アクセスポイント、カメラなどのWi-Fi HaLow対応機器。左下の青いデバイスはRS-485に対応したWi-Fi HaLowブリッジ

他のLPWA同様、Wi-Fi HaLowも工場のスマート化に寄与するが、高スループットの特性を活かしたユースケースがサーモメーターによる設備の予知保全だ。設備の温度を常時モニタリングし、画像として取得したデータをWi-Fi HaLowで伝送する。このような画像伝送は、他のLPWAでは実現が難しい。ブースではそのデモを実施している。

Wi-Fi 7対応アクセスポイントはバラエティ豊かに スピードテストは“50倍以上”

Wi-Fiの利活用を進めるWi-Bizは、何と言ってもWi-Fi 7が展示の中心だ。ブースには会員企業10社のWi-Fi 7対応アクセスポイント(AP)が並ぶ。排熱効率を重視した比較的大型の業務用モデルから、壁面取り付けが可能な小型モデルまで、昨年と比較し一段とバラエティが豊富になった。

Wi-Fi 7対応アクセスポイントの一部。上段左端がファーウェイ「AirEngine 5776-26」

Wi-Fi 7対応アクセスポイントの一部。上段左端がファーウェイ「AirEngine 5776-26」

なかでも特徴的なのがファーウェイの「AirEngine 5776-26」だ。CSI(Channel State Information:チャネル状態情報)を利用したセンシング機能を搭載し、APを1台設置するだけで人の動きを検出できる。国内ではビーマップがデータ解析用のサーバーを設置し、今夏にもセンシングの運用を開始するということだ。

Wi-Fi 7の最大の特徴は高速・大容量通信だ。展示会会場のように多くの電波が飛び交う環境では、電波干渉によりWi-Fiのパフォーマンスが低下しがちだが、Wi-Fi 7は干渉の少ない6GHz帯を利用することで安定した通信を実現する。Wi-Bizブースではスマートフォンによるスピードテストを実施。Wi-Fi 6が下り20Mbps程度だったのに対し、Wi-Fi 7では1Gbps~1.5Gbpsを記録。その差は実に50倍以上に及び、Wi-Fi 7の実力を実感できる結果となった。

ブース内のスピードテストでは、Wi-Fi 6が20Mbpsだった(左)のに対し、Wi-Fi 7は1.5Gbpsを超えた

ブース内のスピードテストでは、Wi-Fi 6が20Mbpsだった(左)のに対し、Wi-Fi 7は1.5Gbpsを超えた

Wi-Fi 7の本格普及のカギを握るのが、6GHzの周波数を既存無線システムと共用するための仕組みであるAFC(Automated Frequency Coordination)システムだ。AFCが実現すれば、現在は規制されている屋外利用や、6.5GHz帯への拡張の道が拓ける。

Wi-BizではAFCの実現に向け、総務省との連携を進めており、その取り組みをブースで紹介。Wi-Biz 渉外・広報委員会の副委員長を務める日本コムシスの岡田雅也氏は、「AFCにより屋内外でのSP(Standard Power)モードが可能になれば、Wi-Fiの汎用性が飛躍的に高まる。高出力APであれば設置台数も抑えられ、ローカル5Gの代替にもなり得る」と語り、大きな期待を寄せた。

また、災害時や大規模通信障害時に開放されるフリーWi-Fi「00000JAPAN」の普及促進もWi-Bizの活動の一環だ。ブースでは新たに制作された啓発動画を上映し、より多くの人々への認知拡大を図っていた。

動画で緊急時用フリーWi-Fi「00000JAPAN」の認知拡大を図る

動画で緊急時用フリーWi-Fi「00000JAPAN」の認知拡大を図る
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