日本ではクラウドWi-Fiのイメージが強いCisco Merakiだが、実はその製品ポートフォリオは幅広い。スイッチ/ルーター、UTM、ネットワークカメラ、IoTセンサーと多様な製品を展開しており、それらすべてをクラウド上の管理システムから運用することができる。
シスコシステムズは2022年4月11日、このCisco Merakiのビジネス状況と新製品の追加に関する記者発表会を開催。Cisck Meraki ジャパンカントリーリードの山移雄悟(やまうつりゆうご)氏は、「この3年間(2019年以降)、国内販売台数が594%も成長。新規顧客数も2021年に1万社を超えた」と、コロナ禍においても堅調な成長を続けている現状を語った。
Cisco Merakiの日本におけるビジネス状況(2019年以降)
山移氏によれば、Cisco Merakiは現在、「カスタマーエクスペリエンス」の向上を主軸に製品・ソリューションの開発を進めているという。新たなテクノロジーを導入することで高度な機能をより扱いやすくするのと並行して、「製品ポートフォリオを増やし、Merakiの適用範囲を広げてタッチポイントを拡大する」ことで、顧客企業に対してより良い体験を提供していくという。
Cisco Meraki ジャパンカントリーリードの山移雄悟(左)と、
テクニカルソリューションアーキテクトの脇中遼氏
カスタマイズAIをネットワークカメラに搭載
新製品の1つめは、2017年から提供を始めたネットワークカメラ「MV」の新モデルだ。
MerakiのMVカメラは、録画・映像分析用サーバーの設置が不要で、カメラを導入してクラウドと接続するだけで人物検知等のインテリジェント機能が使えるのが特徴だ。コロナ禍においてはオフィスや店舗内の密監視に採用するケースも増えており、AIがカメラ映像を分析して人と座席を認識し、在席率を可視化するといった用途でも使われているという。
Meraki MVカメラのラインナップ
今回追加されるのは、この映像分析機能をユーザーがカスタマイズできる「カスタム CV(コンピュータビジョン)モデル」だ。Cisco Merakiでは人や自動車、座席を検知・分析する機能を提供しているが、それに加えて、ユーザーが新たなAI学習モデルを作ってMVカメラに展開して使うことができるようになる。
例えば、工場・倉庫での梱包作業時に内容物が適切に含まれているかをカメラ映像で自動判別するAIモデルを作り、それをMerakiクラウドに登録、工場・倉庫内のMVカメラに展開することができる。飲食店なら、カウンターに出されたコップや皿を配膳スタッフが手に取るまでの時間を計測し、業務効率を分析するといった使い方も可能になるという。
AI関連スキルを持つエンジニアがいない企業にとっては、学習モデルをいかに開発するかが課題となるが、その点は、AI学習モデルを作成するためのプラットフォームを提供しているCogniac社との提携によって解消する。
Cisco MerakiとCogniacプラットフォームの連携イメージ
Cogniacは、画像イメージのラベリングから機械学習モデル開発までのワークフローをノーコードで行える「ヴィジュアルインテリジェンスプラットフォーム」を提供している。Cisco Meraki テクニカルソリューションアーキテクトの脇中遼氏は、これとMerakiクラウドを連携させることで、「MVカメラで撮ったスナップショットをCogniacクラウドへ送り、そこで深層学習したモデルをMerakiに戻し、カメラで実行する」仕組みを提供すると説明。「AIの専門知識がなくても、誰でも簡単にAIが活用できる。AIが飛躍的に身近になるだろう」と展望した。