「これまでWi-Fiで無線通信システムを組んできたところに、新たな選択肢が加わる」。情報通信総合研究所(ICR)ICTリサーチ・コンサルティング部で上席主任研究員を務める岸田重行氏がこう話すように、企業にとって最もわかりやすいローカル5Gの価値は、自由度の高いプライベートネットワークを構築するための選択肢が広がることにある。実際、Wi-Fiの代替としてローカル5Gを検討するユーザーやSIerは多い。
情報通信総合研究所(ICR) ICTリサーチ・コンサルティング部
上席主任研究員 岸田重行氏
ただし、Wi-Fiも今、大きな進化のタイミングを迎えている。
セルラー技術のOFDMAを取り込んで周波数利用効率と端末収容能力を格段に高めた新規格「Wi-Fi6」が登場。企業ネットワークではまさに今から、Wi-Fi5からWi-Fi6への移行が始まろうとしているところだ。
図表 ローカル5GとWi-Fi6の比較
セキュリティと信頼性に差ローカル5Gは今後、Wi-Fiに代わる無線ネットワーク構築の選択肢として導入検討が進むだろう。そこで重要なのが使い分けだ。ローカル5GとWi-Fi6の特性を正確に見極めることが出発点となる。
通信速度については、どちらもギガビット級のスループットが期待できる。複数のデバイスを接続するケースでも数百Mbpsの高速通信が可能だ。高精細映像の伝送にも適する。
それ以外の点では、両者には大きな差がある。
Wi-Fiと比べたローカル5Gの優位点は、セキュリティ強度が高いこと、そして免許周波数帯を用いるため通信品質が安定していることだ。「Wi-Fiに比べてセキュアであり、ローカル5G同士の干渉が避けられれば、通信の安定性が担保される」(岸田氏)。
セキュアであるという点については主に2つの要素がある。
1つは認証方式だ。Wi-FiはSSIDとパスワード、ローカル5GはAPN(Access Point Name)とパスワードで認証する点は同じだが、ローカル5GではSIMカードによる認証も行うため、セキュリティはより強固になる。
もう1つが、周波数の特性による差異だ。
Wi-Fiで用いる2.4/5GHz帯の電波は障害物を回り込みやすいため、電波が敷地・建物の外に漏れ出しやすい。端末と接続しやすい反面、不正侵入や情報漏えいのリスクも高まる。
ローカル5Gも4.5GHz帯の場合は同様の問題が生じるが、ミリ波(28GHz帯)を用いる場合は、比較的容易に敷地・建物外への電波漏洩を防ぐことができるだろう。