デジタルトランスフォーメーション(DX)を実現する要素となるクラウドやIoT、AI。これらのテクノロジーはすべてネットワークが下支えとなる。企業には、このDXの基盤となるネットワークの変革が求められる。
業務に用いるアプリケーションが急激に変化しているのに対して、ネットワークの現状はあまりに“前時代的”だ。
IPネットワークの利用が一般化した1990年代以降、3階層アーキテクチャに基づく構築・運用法は基本的に変わっていない。ルーター/スイッチ等の機器ごとにエンジニアが設定変更・管理を行い、構成変更やポリシー設定に膨大な時間と手間が費やされる。大規模なネットワークであれば数週間、数カ月かかることも珍しくない。
「20年間も変わらない」「20年もこれでやっている。このままではマズい」。柔軟性に欠け、かつ運用効率も悪いままの企業ネットワークでは今後のDX時代を支えきれないと話すのは、IDC Japanでコミュニケーションズ グループマネージャーを務める草野賢一氏だ。
「DXでビジネスモデルを変えたいという企業は多いが、その前段階として効率化が必要だ。IT部門は、もっとビジネスに貢献する、新たなビジネスを作り出すような存在を目指す必要があるが、今のネットワーク運用のやり方はあまりに非効率。DXという大きな話をする前にまず、そのための準備をするべきだ」
加えて、日本企業が直面するもう1つの課題もネットワークの変革を促している。人手不足だ。
「エンジニアや管理者の高齢化によって、ネットワークを見る人がいないという話も増えてきた」と同氏。このままでは、スピードが増すばかりの企業活動の“足を引っ張る”ことにもなりかねない。
IDC Japan コミュニケーションズ グループマネージャー 草野賢一氏
前年比2倍成長の企業SDNでは、企業はどのようなネットワークに変わる必要があるのか。わかりやすく言えば、シンプルに運用でき、柔軟性と拡張性が高いネットワークということになる。
例えば、新たなクラウドサービスを各拠点に展開する場合に、必要な性能・機能等を備えたネットワークを短時間に準備できる環境が必要だ。
ネットワーク障害がビジネスに及ぼす影響がこれまで以上に高まるため、問題解決とパフォーマンスの最適化を迅速に行える仕組みも求められる。企業は、クラウドの進展等によってネットワークが大規模化・複雑化するなかで、これを実現しなければならない。
変革の“ファーストステップ”となるのは、SDN(Software-Defined Networking)だ。ネットワークの集中管理や可視化、仮想化を実現するこの技術が注目されるようになってもう5年以上が経つが、ここに来て、企業ネットワークの領域でも採用が活発化してきた。
IDC Japanが4月に発表した国内市場予測によれば、企業ネットワークSDN市場の2017年の前年比成長率は、2016年の前年比成長率59.3%を大きく上回る96.5%と、市場規模は約2倍に増大。2022年までの年平均成長率も31.3%と、今後も力強い成長を予測している。