制度化から約5年が経過したローカル5G。コストの高さなどが原因となり、期待通りに導入が進んでいない状況を打破するため、総務省は2022年より「ローカル5G制度の柔軟化」に関する検討を開始。ローカル5Gの免許手続きの簡素化などに関する議論が行われてきたが、この取り組みの中で2023年に解禁となったのが、ローカル5Gの「共同利用」である。
自らの敷地や建物内でローカル5Gを使う「自己土地利用」と、他者の建物・土地をまたいでエリアを構築する「他者土地利用」に次ぐ第3の利用形態で、複数の利用者が所有する自己土地をつないで「共同利用区域」として設定し、この区域を自己土地相当とみなすものだ。
共同利用サービスにはどんなメリットがあるのか。利用者側にとっては、ローカル5Gを安価に利用できるということに尽きるだろう。
資金力が潤沢な大企業ならまだしも、中小企業が数千万~数億円かかるとも言われているローカル5Gを構築・運用するのはハードルが高い。一方、共同利用では、ローカル5Gを利用する企業・団体がグループを作って1つの基地局をシェアできるようになるため、コストの低廉化につながる。
また、従来の自己土地利用では、マンションやオフィスごとに基地局を設置しなければならず、採算が取りづらかったが、共同利用はこういった問題も解決し得る(図表1)。
他者土地利用のリスクを解消できることも、共同利用のメリットだ。他者土地利用でローカル5Gを構築した場合、そのエリアに後発で自己土地利用を希望する事業者が現れると、サービスを停止しなければならない。共同利用であれば、免許有効期間(最長5年間)は共同利用区域が優先されるため、このリスクを低減できる。