
――法人向けMVNO市場の現状と今後の動きについて、どう見ていますか。
森田 法人向けMVNOサービスは、利用目的や導入規模、求める機能などが企業によって大きく異なるため、お客様のニーズに応じた柔軟なサービス提供が求められます。こうした背景から、MNOの画一的なサービスではなく、より自由度の高い設計が可能なMVNOサービスへの需要が高まっていると感じています。
また、場所を問わない働き方が定着するなかで、SIM内蔵PCの需要も拡大しています。多様かつ安価なSIMサービスを提供できるMVNO事業者には優位性があり、当社としてもこの分野に力を注いでいきます。
――今年8月、丸紅I-DIGIOホールディングス(以下、丸紅I-DIGIO)とソラコムのMVNO新会社「ミソラコネクト」を設立されました。その狙いは。
森田 丸紅グループでは、2012年に前身となる丸紅無線通信が通信事業を開始し、2020年より丸紅I-DIGIO傘下の丸紅ネットワークソリューションズ(以下、丸紅ネットワーク)がNTTドコモの回線を利用するフルMVNOとして活動してきました。
しかし、無線分野に精通したエンジニアの採用が思うように進まず、体制面での課題を抱えていました。グループ内に海底ケーブル事業などを手掛けるアルテリア・ネットワークスはいますが、有線と無線では事業構造やノウハウが大きく異なり、事業推進の面でも難しさを感じていました。
そんな中、IoTや無線分野で豊富な知識や経験を持つソラコムから、パートナーシップの提案をいただきました。丸紅グループとしても、パートナー企業との連携が不可欠だと感じており、今回ジョイントベンチャーという形で協業することになりました。
高橋 丸紅ネットワークは、リモートワークや映像のアップロードなど、大容量通信のニーズに応えるサービスを展開してきました。一方ソラコムは、センサーや機械などのIoTデバイスを対象に、低コストで小容量通信から手軽に始められるサービスを提供しています。両社の得意分野を生かし、補完し合える関係を築けるのではないかと考え、新会社を設立しました。
――ミソラコネクトという社名には、どんな思いが込められていますか。
森田 社名のミソラコネクトは、「美(ミ)」と「空(ソラ)」を組み合わせた造語です。丸紅ネットワークが展開してきたモバイル通信サービス・M-Airの「M」や、ソラコムの「ソラ」との親和性に加え、国内発の企業として、日本らしい印象を持っていただけるよう、「ミソラ」という名称を採用しました。
――ミソラコネクトでは、丸紅I-DIGIOのMVNO事業を引き継がれるとのことですが、M-Airは現在どのような用途で使われていますか。
森田 監視カメラのニーズが近年特に高まっています。例えば、監視カメラの映像をクラウドにアップロードし、生成AIを活用して異常検知・顔認証などの高度な解析を行うといった事例が増えてきています。また、ローン購入した車にIoTデバイス等を設置し、支払いが滞った場合に遠隔からエンジンを停止するなど、車両管理にもM-Airが使われています。