「デジタル赤字6.7兆円、現場データのAI化が鍵」 経産省が語る日本のAI戦略

経済産業省 商務情報政策局 情報技術利用促進課長 兼 情報産業課 AI産業戦略室長 渡辺琢也氏

経済産業省 AI産業戦略室長の渡辺琢也氏が2025年11月20日、経済産業省のAI政策の動向と展望をテーマに、イベント「Edge Tech+」で講演し、生成AIの社会実装に向けた取り組みなど、政府のAI関連政策の最新動向を紹介した。

渡辺氏はまず、日本が直面する構造的課題について「2040年には生産労働人口が2割減少する。この人口動態は確実に起こる」と述べ、AI活用による生産性向上の必要性を強調した。また、現在6.7兆円に達するデジタル赤字も深刻で、インバウンドの黒字をほぼ食いつぶしている状況だという。

こうした課題に対応するため、日本政府は昨年6月、AI推進の基本となる法律であるAI法を成立させた。これについて渡辺氏は「EUのAI法は規制法だが、日本は推進法。これが決定的な違いで、最もAIを開発活用しやすい国を目指す」と説明した。同法に基づき、内閣総理大臣を本部長とする「AI戦略本部」を設置し、全閣僚でAI推進の基本方針となる「AI基本計画」を年末までに策定するという。

サイバーエージェント、全社員6000名超にリスキリング

日本企業がAIを活用する上での課題について、渡辺氏は既存の業務のやり方を変えず、それに合わせてITシステムをカスタマイズしてきた従来の構造を指摘。「AIを前提とした業務プロセスや組織構造の設計が必要」だと述べ、サイバーエージェントの事例を紹介した。同社は2016年、ChatGPT登場前から生成AIの研究開発に取り組み、トップダウンでの業務プロセス見直しに加え、生成AIによる業務効率化や新規事業の着想ができる状態を目指すeラーニングを全社員6000名超に対してリスキリングしているという。

経産省では、全社会人向けと専門人材向けのデジタルスキル指標を提示し、企業が自社のDX推進状況を評価できるチェックリストを提供していることやDX推進の優良企業を選定・表彰し、先進事例を他社に広げる取り組みも進めていることを説明した。

サイバーエージェントの事例
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