NTTドコモが推進するAIコンペ戦略 学術と実務競技で磨いた技術をサービスに活かす

NTTドコモが海外のAIデータ分析コンペティション(以下、コンペ)に意欲的に参加している。2025年は学術から実務分野まで幅広くKDD Cupなどの権威あるコンペに参加し、相次いで成果を収めた。サービスイノベーション部 担当課長の加藤剛志氏は、コンペ参加の狙いをこう説明する。「ドコモは日本最大級の顧客基盤とモバイルネットワークを持っている。そこに世界と競えるAI技術を融合し、社会や顧客に新たな価値を提供しており、個人の挑戦が最終的には事業成長につながる」

同社では数年前から、希望する社員がコンペに参加できる環境を整備。実務状況を考慮した上で、業務内での参加を認め、クラウド環境やGPUサーバー環境も利用可能にしている。

同部門 Principal Data Scientistの宮木健一郎氏は、「実務とコンペは密接に連動している。コンペで磨いた技術を実務に応用し、実務で得た知見をコンペで試す。このサイクルによって、技術力とビジネス価値創出の両方が向上する」と語る。社内にはコンペのコミュニティもあり、約250名が参加し、情報の共有が活発だという。

(右から)NTTドコモ サービスイノベーション部 担当課長 加藤剛志氏、Principal Data Scientist 宮木健一郎氏、橋本雅人氏、データプラットフォーム部 主査 鈴木明作氏、クロステック開発部主査 福島悠介氏

(右から)NTTドコモ サービスイノベーション部 担当課長 加藤剛志氏、Principal Data Scientist 宮木健一郎氏、橋本雅人氏、データプラットフォーム部 主査 鈴木明作氏、クロステック開発部主査 福島悠介氏

生成AIの誤答をいかに防ぐか

KDD Cupは、データマイニング分野のトップカンファレンスであるKDDの中で開催されているコンペだ。1997年から始まり、グーグルなどのスポンサー企業の実務を模した問題が出題されることが多い。2025年はメタが主催し、画像に関する質問への生成AIを用いた回答精度を競った。

ドコモは宮木氏が率いる3部署にまたがるチーム「otonadake」を含めた数チームが参加。最大の課題は、生成AIのハルシネーション(誤った回答の生成)をいかに抑制するかだったという(図表1)。「誤った回答をするよりも分からないと答える方が良いという課題をいかに解決するのか工夫した」とチームメンバーの1人であるクロステック開発部 主査の福島悠介氏。また、「なぜそう考えたか」という理由も含めて段階的に答えを導き出すようにしたという。さらに、大規模言語モデルの回答を手本に、小型モデルのLlama 3.2 11Bに学習させる知識蒸留の手法により回答精度を高め、2つの部門で特別賞を受賞した。

図表1 ハルシネーション抑制のための学習率の調整

図表1 ハルシネーション抑制のための学習率の調整

宮木氏は、「高性能GPU(H100)は個人で購入しようとすると500万円以上するが、こうした計算資源を会社が提供してくれることで、個人では難しい大規模な学習や、様々なアプローチを短期間で試行できた」と企業バックアップの重要性を強調した。

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