6Gは5Gの進化形として捉えられがちであるが、中国の政策においては、将来の産業競争力やデジタル主導権を左右する重要な産業基盤として位置付けられている。
2026年3月に全人代で承認された「第15次5カ年計画綱要(2026〜2030年)」は、現代化産業体系の構築、科学技術の自立化、国内市場の拡大を中核課題に据えている。その中で、6Gを量子技術、バイオものづくり、水素・核融合エネルギー、ブレイン・コンピュータ・インタフェース(BCI)、エンボディドAIなどと並ぶ未来産業として明記し、新たな成長エンジンに育成する方針を掲げている。
また、2025年11月にIMT-2030(6G)推進グループ主催の「6G発展大会」において、工業・情報化部(MIIT)の副部長である張雲明氏は、6Gが次世代デジタル基盤として、通信とAI、センシング、計算、セキュリティの高度な融合を実現するものとの認識を示した。MIITは、6Gに関連する技術研究から標準策定、試験検証、市場育成までを一体的に進め、6Gの融合活用を見据えた産業エコシステムを先んじて構築する方針を明確にしている。
では、中国はどのように6Gを新たな産業基盤に育成しようとしているのか。6Gの開発・検証に関する最新動向を整理した上で、産業DXにおける5G-Advancedの浸透と6Gへの期待、さらにAI実装における6Gの位置づけと投資戦略を考察する。合わせて、6G向け周波数の確保をめぐる政策動向も概観する。
中国の6G開発は2030年のサービス商用開始および2035年の大規模商用展開を見据え、3段階のロードマップに沿って推進されている。「人民郵電報」の報道によると、2025年11月の「6G発展大会」では、第1段階の「コア技術試験」の完了と、第2段階の「技術ソリューション試験」への移行が発表された。来年以降、第3段階の「システム・ネットワーク構築試験(2027年〜2030年)」が開始され、6Gのプレ商用設備の開発と、主要製品の試験が行われる見通しである。
1.コア技術試験の完了
「コア技術試験(2022年〜2024年)」では、主要技術の方向性を明確化し、技術的ベースラインを特定した。国内業界内の合意形成のみならず、国際標準化の研究範囲への組み込みを推進している。2025年6月時点で、中国の6G関連特許出願件数は世界全体の約40.3%を占めていた。加えて、同年11月の報道によれば、中国は300項目超の6Gコア技術を保有している。
2.技術ソリューション試験の本格始動
現在進行中の「技術ソリューション試験(2025年〜2026年)」は、技術を製品や具体的なユースケースに落とし込むことを目的としている。具体的には、国際電気通信連合(ITU)の代表的シナリオや3GPPの標準化研究の重点事項に基づき、プロトタイプ機を開発し、性能試験を実施する。2025年11月までに、すでに5つの技術分野における57のテストケースの検証を完了した。
3つの代表例を挙げて、どのような試験が行われているかを説明する。
第一に、中国電信研究院および中国電信北京支社は2025年10月、業界初となる「多局・多RIS(Reconfigurable Intelligent Surface)ネットワーク実証試験」に成功した。3拠点の基地局連携と、複数RISの協調制御による広域カバレッジおよびシームレスなハンドオーバーを実現したことで、移動中のライブ配信やドローンの巡回点検などに求められる通信の連続性が確保されている。
第二に、江蘇省南京市の紫金山実験室が「6G無線制御によるピンポン玉のリフティング試験」を行っており、産業ロボットの自動制御や高精度な連携に必要な百マイクロ秒級の遅延と99.99999%の信頼性確保を目指している。
第三に、江蘇省太湖で行われた水域巡回試験では、6G試験ネットワーク設備を搭載した指揮車がセルレス(cell-free)通信技術を用いて巡回ドローンを支援する。この連携により、30km以上の超遠距離監視と、高精細映像のリアルタイムの伝送が可能になっている。
以上の3つの試験は、6G技術による広域接続、精密制御、遠隔運用を検証し、産業現場や低空経済、都市管理向けの応用シナリオを提示している。さらに、2026年4月に南京で行われた「グローバル6G技術と産業エコシステム大会」で、国内初のPre6G試験ネットワークが正式に稼働した。低空巡回、製造業、エンボディドAI、ホログラフィック会議など10の応用シナリオでシステム検証を進めている。中国の6Gがこれらの重点分野を支える基盤として、技術開発から産業実装への加速が期待されている。