自動車や家電など、あらゆるモノがインターネットにつながる時代が到来している。IDC Japanによると、2023年の国内IoT市場規模は約6兆4670億円。2023~2028年のCAGR(年間平均成長率)は8.0%で、2028年には約9兆4820億円に到達する見込みだ。
当初は、接続機器の状態把握や位置情報の特定などにIoTが用いられてきたが、AIや機械学習(ML)技術の発展により、AIとIoTが“融合”しつつある。さらに、音声や画像なども取り扱えるようになる「AIのマルチモーダル化が進み、IoTの分野でAIが活用できる範囲が広がっている」。こう語るのは、IDC Japan Infrastructure&Devices リサーチマネージャーの山下頼行氏だ。AI自身がIoTデータを分析し、動画像を組み合わせてそのトレンドを人間に教えてくれる時代がそこまで来ている。
これに取り組む1社が、「IoTテクノロジーの民主化」を掲げるソラコムだ。具体的には、ChatGPTを用いてIoTデータを分析する「SORACOM Harvest Data Intelligence」を提供している。
ダッシュボード画面に「AIに聞く」ボタンが用意されており、それをクリックすると複数の質問案が表示される。例えば「データについて説明してください」「データになにか特筆すべき箇所や傾向、異常値はありますか」と質問すると、生成AIが分析結果を回答してくれる。膨大なIoTデータを解析して改善につなげるのは人手では限界があるが、生成AIを用いれば分析にかかる工数を削減できるうえ、データ分析のハードルが劇的に下がる。
米シリコンバレー発のスタートアップMODEは、生成AIを活用したIoTソリューション「BizStack Assistant」を展開している(図表1)。現場の状況を生成AIがチャットボットを介して報告してくれるというものだ。
例えば、ある建設現場で異常が発生したとすると、「このトンネルの水中ポンプが停止しています」とチャットベースで教えてくれる仕組みになっている。「復旧方法を教えて」と指示すれば、業務マニュアル等を参照して復旧手順を教えてくれる。
復旧後も、「水中ポンプは正しく動いていますか」と尋ねれば、現場カメラが撮影した映像を確認することもできる。リアルタイムデータの集計やグラフ等を用いたレポート作成も自然言語で行える。
BizStack Assistantのような会話型アシスタントは、社内に分散する知識・ノウハウを組織全体で蓄積・共有する「ナレッジマネジメント」に一役買うもので、業務効率化や属人化の解消につながるだろう。
生成AIを活用した会話型アシスタントは、セキュリティ領域でも力を発揮する。フォーティネットは、「生成AI型IoTセキュリティアシスタント」を今年5月に発表。UTMアプライアンス「FortiGate」シリーズを一元管理できるプラットフォーム「FortiManager」に同アシスタントを搭載し、自然言語で脆弱性の検知や異常発生時の原因究明が可能になる。IT/ネットワーク運用を担う情シス担当者の負担軽減が期待される。