NTT法の見直しに関する議論が始まっているなか、NTTは9月4日、NTT法に関する記者説明会を行った。NTT法の見直しに対するNTT自身のスタンスを主張するのが今回の目的ではなく、あくまでNTT法に関する「ファクト」を説明するのが趣旨だという。NTT 経営企画部門 担当部長の飯島章夫氏がレクチャーした。
NTT法(日本電信電話株式会社法)は、1985年の電電公社の民営化にあわせて制定された。
「(電電公社の)設備や人員、技術、業務のすべてを民営化する会社に引き継ぐに伴って制定された。NTTは、その存在目的や責務等を規定するNTT法に基づく特殊会社としてスタートした」
NTTの目的とされたのは「国内電気通信業務を経営すること」。また、責務としては、「あまねく日本全国における安定的な電話役務の提供の確保」や「電気通信技術に関する研究の推進、成果の普及等」が定められた。
その後、NTTが1999年に持株、NTT東日本、NTT西日本、NTTコミュニケーションズの4社に再編成されるのに伴ってNTT法は改正。NTT法が定めた責務は、NTT持株とNTT東西に承継された。現在NTT法の対象となっているのは、NTT持株とNTT東西の3社であり、NTTドコモやNTTコミュニケーションズ、NTTデータらはNTT法の規律下にはない。
また、今回のNTT法の見直しをめぐっては、公正競争の確保の観点からも大きな注目を集めているが、NTT法そのものは「公正競争といった観点ではなく、国から継承した資産をしっかり引き継ぎ、安定的に提供していくうえでの特殊会社目的・責務を中心に定められていると認識している」と飯島氏。
公正競争に関しては、すべての電気通信事業者を対象とする「電気通信事業法が担っていると認識している」と説明した。
では、NTT法の見直しにあたっては、何が論点となるのか。1つは、ユニバーサルサービスである。
前述の通りNTT法では、あまねく日本全国での電話サービスの提供、すなわちユニバーサルサービスの提供が責務として定められており、NTT東西がこの業務を担ってきた。
ただ、NTT東西の自助努力だけでは、不採算地域での加入電話のユニバーサルサービスの提供維持は困難なことから、ユニバーサルサービス基金制度の仕組みが2002年に制定。他の通信事業者もその維持コストを負担する仕組みができたが、携帯電話や光ブロードバンドサービスなどが広く普及するなか、ユニバーサルサービスの在り方そのものについて根本的に議論する時期に来ており、そのためにはNTT法の見直しも必要になる。
「ユニバーサルサービスをどんな役務で提供していくべきかを含めて、その在り方についてしっかり議論しなければならない状況だと思っている。なので、これ(NTT法の見直し)と併せて、議論されていくことになるだろう」と飯島氏は語った。
「どんな役務で」というのは、固定電話以外、携帯電話など他の手段でも構わないのではないか、という話である。現在も「光回線電話」で代替することが認められているものの、あくまで固定電話の提供が難しい場合という前提付き。また、この光回線電話は、一般に広く提供されている「ひかり電話」とは異なるものだという。