あらゆる産業で人手不足や生産性向上が叫ばれているが、その中でも建設業は特に深刻に直面している。国土交通省第47回住宅宅地分科会(2019年9月12日開催)の資料によれば、建設業の就業者数は、1997年には685万人だったが、2018年には503万人に大幅減少。就業者の年齢は55歳以上が約35%、29歳以下が約11%と高齢化が進んでいる。
長時間労働の常態化という課題もある。建設業は労働基準法の改正による時間外労働の上限規制の適用を5年間猶予されているが、2024年4月からは適用されるため、いよいよタイムリミットが迫る。こうした課題を解決するため、建設DXが加速している。
NTT東日本から見た建設現場NTT東日本は2019年の夏頃から建設業界向けのチームを立ち上げ、1年半かけて約60社に建設現場の課題をヒアリング。「状況確認などで現場間・内の移動に時間がかかる、高所やトンネル内に通信環境がなく業務で使うシステムにアクセスできない、熱中症やコロナ対策、不安全行動といった作業員の体調・安全管理に関する悩みがよく聞かれた」とNTT東日本の辛島弘一氏は話す。それらの課題をまとめたのが図表1だ。NTT東日本は、1つ1つの課題に対して様々なソリューションを提案している。
図表1 建設現場における課題
例えば、作業員の安全管理には、腕時計型のウェアラブルセンサーで脈拍や位置情報などを計測し、体調をリモートでリアルタイムに確認できるソリューションを提供する。熱中症の兆しなど異常があれば、管理者にアラートを通知。腕時計型に限らず、NTTと東レが共同開発した生体信号を収集できる機能素材「hitoe」で作られたシャツによって体調をセンシングするタイプなど、複数のソリューションを用意している。
この他にも、「建設機材の盗難防止対策にネットワークカメラ、作業員向けのWi-Fi付き自動販売機、データ化された図面等の情報漏えい対策など幅広くご提案している」とNTT東日本 神奈川事業部の水谷次郎氏は紹介する。
もちろん本社と現場事務所を繋ぐためのVPNの構築をはじめ、通信環境もセットで提供できる。キャリアの電波が届かず、光回線を引くのも難しいような建設現場ならではの特殊な環境にも対応する。「高層ビルなら例えばマルチホップWi-Fiのアクセスポイントを数階おきに置くことで、上層階に通信環境を繋げていく。山間部の現場なら、まずは一番近くの事務所や建物までNTTの回線を引き、そこから長距離無線システム『WIPAS』等で数キロ離れたトンネルの入り口まで無線電波を飛ばす。そしてその電波を受けて、現場にWi-FiやLANなどネットワーク環境を作ることも可能だ」(辛島氏)