IOWNは2022年実装開始 オール光網の骨格作りがスタート

「2030年に向けて進化していくのがIOWN。いつから始まるのか、と問われるが、2025年まで待ってと言うつもりはない。オールフォトニクス・ネットワークはすでにPoCができる状態にあり、使える場所を見つけて2022年度から入れていく」

NTTの次世代情報通信基盤構想「IOWN」。研究企画部門 IOWN推進室・室長の川島正久氏によれば、その社会実装がいよいよ始まる。

オールフォトニクス・ネットワーク(APN)とはIOWN構想の主要構成要素の1つで、電気信号に変換することなく光のみで情報を伝送する次世代ネットワークのことだ。これに、TCP/IPを使わず、通信ノード間を光の波長パスでダイレクトに接続してデータを伝送する新たな手法を組み合わせることで、データ流通の仕組みを作り直そうとしている。

NTT 研究企画部門 IOWN推進室 室長 川島正久氏
NTT 研究企画部門 IOWN推進室 室長 川島正久氏

バケツから水道管へ中継ノード(ルーター)でパケット転送を繰り返す現在のパケット網は「バケツリレー方式」だ。スマホとWebサーバーやクラウド間のように、どこでもつながるAny-to-any接続には適しているが、無駄も多い。

APNはそこから脱却し、Point-to-point接続が欲しい場面で、大量データを一気に流すパイプライン輸送へ転換することを狙っている。例えば、IoTセンサー/カメラと、そのデータ・映像を解析するエッジAIとの間、車・ドローンと、その運行を管理するデジタルツインとの間、5G基地局のアンテナと制御部との間などだ。

Any-to-any接続が必要ないポイント間を光パスで直接つなぎ、大容量・低遅延にデータを伝送する。いわば、水道管を引くイメージだ。

電気信号への変換も、伝送完了までに何往復ものやり取りが発生するTCP/IPの無駄もないため、遅延が極端に少なく、かつ電力効率の高い通信が可能になる。このようにネットワークアーキテクチャを根本から見直すことで、エレクトロニクス(電子)ベース、TCP/IPベースでは達成が困難なレベルの「超高品質・大容量」「超低遅延」、そして「超省エネ」伝送を実現することが、APNの目的だ。

このパラダイムシフトが求められる背景には、DXの進展がある。デジタル化、AI活用が進展するに伴い、データ量とその伝送・処理にかかる電力は際限なく膨らむ。スマートシティの基盤となるデジタルツインや、そのインフラとして使われる5G/6Gの展開と、カーボンニュートラルを両立することは従来技術では難しい。APNはその解決策になり得る。

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