NTT東日本は2023年4月26日、東京・初台のNTTインターコミュニケーションセンター[ICC]で「Digital×北斎」【急章】その1」展「生きるが如く描く~北斎 肉筆の宇宙~」の開催を発表し、同日メディア向けに内覧会を開いた。
同展は2023年4月29日から10月1日まで開催する。NTT東日本はNTT ArtTechnology、アルステクネと葛飾北斎の作品の高精細デジタルアート化にかねてより取り組んできた。その成果は「Digital×北斎【序章】」展(2019年11月~2020年2月)、「Digital×北斎【破章】」展(2020年12月~2022年7月)、「Digital×北斎」特別展(2022年6月~7月)の3回の展覧会で披露され、多くの来場者にデジタル技術を活用した新たな鑑賞体験を提供した(参考記事:北斎の天井絵「鳳凰図」を高精細デジタル化で再現展示 NTT東日本が地域文化財を楽しむ分散型デジタルミュージアム)。
4回目となる今回の展覧会は、北斎が晩年に力を注いだ肉筆画をテーマにする。肉筆画には構図、意匠、絵具の選択、反射や凹凸など、様々な技法による表現が用いられているが、これまでは作品保護の観点からそれらを詳細に調査することは困難だったという。
文化財のデジタル化事業を行うアルステクネは、ミクロン単位の再現が可能な特許技術「三次元質感画像処理技術(DTIP)」を持つ。この技術を用いて作品を高精細デジタル化することにより、絵筆の凹凸や和紙の繊維なども含めた、肉筆画の細部の表現を明らかにした。展覧会では、原画を細部まで忠実に再現したマスターレプリカを中心に展示する。
内覧会に先立って開催された記者会見では、一連の「Digital×北斎」プロジェクトについても紹介された。2022年6月から7月に開催された特別展では、北斎最大の作品である岩松院本堂(長野県小布施町)の天井絵「鳳凰図」をデジタル化した複製画と、完成当時の状態を推定した復原版を展示。大きな反響を呼び、小布施町を訪れる人が増え、岩松院の拝観客はコロナ前を上回ったという。NTT ArtTechnology 代表取締役社長の国枝学氏は「文化財をデジタル化し鑑賞の機会を増やすことが、地域活性化につながると証明できた」とその成果を誇った。
また、アルステクネ 代表取締役社長の久保田巖氏は、寺社仏閣や日本画など日本の文化財は世界の美術市場で高い関心を寄せられている一方、劣化や損傷を避けるため公開が制限されるというジレンマを抱えていると文化財活用の問題点を指摘。DTIP技術はこの問題をDXによって解決する取り組みだ。DTIPを用いて絵画を疑似立体情報を持つイメージデータとして記録することにより、印刷やディスプレイなど多様なアプリケーションでの利用を可能とした。美術館関係者など専門家からも高く評価されているという。