固辞し続けた海外赴任――。いざ行ってみると、変化が楽しいセキュリティ人生が待っていた。数学好きの研究開発職としてキャリアをスタートさせたNTTデータ(現NTTデータグループ)の鴨田浩明はその後、官僚、謝罪のための全国行脚、営業チーム責任者など、様々な変化を楽しんでいく。そして今、力を入れるのは、グローバルでのセキュリティビジネスの成長戦略。<トラスト(信頼)>あるデジタル社会の実現を目指して挑戦する、NTTグループの上級セキュリティ人材を紹介する連載「<サイバーセキュリティ戦記>NTTグループのプロフェッショナルたち」の第12回に登場するのは、NTTデータグループ 技術革新統括本部 システム技術本部 サイバーセキュリティ技術部 技術部長 鴨田浩明だ。
「そろそろクビになるかも…」
NTTデータ(現:NTTデータグループ)に入社して4年目を迎えようとしていた鴨田は、ついに観念することにした。
上司の提案を断り続けて1年。粘り強い説得に根負けして、鴨田が赴任した先はドイツだった。客員研究員としてベルリンの研究機関に所属しながら、セキュリティに関する新技術を開発し、論文執筆・特許を取得するというのが鴨田に与えられたミッションだった。
1人暮らしも初めてならば、外国語もほとんど話せず、しかも「基本的に人間嫌い」と苦笑いする鴨田。「そんな自分がドイツに放り込まれるなんて」
ところがベルリンでは、予想と違った日々が待っていた。「いやー、楽しいんですよ。上司は自分よりも、私が何に向いているかを理解していたんだな、と思いました」
鴨田はベルリンでの1年の研究生活を終えると、次はロンドンへ向かい、海外での研究生活をもう1年続けた後、日本に帰任する。
それから約20年。鴨田は現在、NTTデータグループのサイバーセキュリティ技術部 技術部長を務めている。対社内においては国内外の子会社を含めたNTTデータグループ全体のグローバルなセキュリティガバナンスとインシデント対応の責任者。対顧客においてはNTTデータグループ全体のセキュリティビジネスのリード役という“2つの顔”を持つ要職だ。
鴨田には、キックオフミーティングなどの大事な会議で必ず話すことがあるという。
「変化を楽しもう」――。
新入社員時代には「ビジネスなんて、とんでもない。とにかく研究論文を書いていたい」と思っていたという鴨田。ドイツ行きの経験が大きな転機となっていた。