2019年5月にNTTが発表した次世代のネットワーク構想「IOWN」。現在のネットワークと比べて、電力効率100倍の低消費電力、伝送容量125倍の大容量・高品質、エンドエンド遅延を1/200に抑える低遅延を目標に掲げている。
IOWN構想の基盤となるのは、電力信号への変換を行わずにネットワークから端末までを光のままで伝送する「オールフォトニクス・ネットワーク(APN)」だ。
NTTはAPN関連技術のさらなる高度化に向け、帯域拡張・波⾧変換などの光伝送技術とともに、動的変更のためのコントローラ技術や仮想化技術の研究開発を進めてきた。
昨年11月、情報通信研究機構(NICT)が公募した「革新的情報通信技術(Beyond 5G(6G))基金事業」に、同社のAPN関連技術に関する2つの研究開発テーマが採択された。
1つ目は、「1T 超級光トランスポート用信号処理回路(DSP) 実装技術」だ。
具体的には、光の位相と偏波を使って1波長当たりの大容量・長距離化を実現する「デジタルコヒーレント光伝送」用デジタル信号処理を、最先端半導体プロセスを用いて小規模・低消費電力で回路実装する基盤技術を確立。1波長当たり1.6Tbpsのデータレートを実現し、従来の光トランスポート用DSPと比べ、消費電力を1/10に抑えることが可能になるという。
2つ目は、「光トランシーバ構成技術」だ。
APNサービスの迅速な提供と効率的な運用保守を行うためには、APNの端末を遠隔から開通・パス設定・監視制御するための仕組みが必要になる。そこでNTTは、光トランシーバが送受信する主信号のフォーマット・プロトコルに依存しない監視制御経路を光ファイバーに重畳し、遠隔に配置したコントローラから制御できる方式やその周辺技術の開発に励んでいる。