2023年春に第1弾の商用サービスがスタートした、IOWNのオールフォトニクスネットワーク(APN)。NTTは2030年にその伝送容量を現在の光ファイバーネットワークの125倍、具体的には光ファイバー1本当たり1ペタ/秒(Pbps)まで増大させるという目標を掲げている。
これをどう実現するのか。NTTアクセスサービスシステム研究所 アクセス設備プロジェクトの中島和秀氏は、「光伝送技術で10倍超、さらに光ファイバーの技術で10倍超。両方をかけ合わせて125倍を達成したい」と話す。
このうち光ファイバー容量の10倍超については、どのようなアプローチで迫っていくのか。
光ファイバーケーブルの限られた空間内で伝送容量を増やすには、現在125μmの光ファイバー外径を細くする手もあるが、既存ファイバーとの互換性を考慮すると得策ではない。そこで、「1本当たりのコアを増やす、あるいは1コア内で送れる光の種類を増やすことを検討している」(同氏)。つまり、マルチコアファイバーとマルチモードファイバーだ。
現在の光ファイバーは、1本当たり1コアで、かつ1コア内に1つのモード(経路・パターン)の光を送る「シングルコア・シングルモード」が主流だ。このコア数を4つにすれば伝送容量は4倍、あるいは1コアに3つのモードの光を送れば3倍になる。両方を組み合わせて、4コアに3モードずつ送れば一気に12倍だ。NTTが狙っているのが、まさにこの方法である。
マルチコア/マルチモードファイバーの研究は世界中で行われており、なかには、12コア×10モードで120チャネルを束ねる技術も報告されている。ただし、そうしたファイバーには、コア数を増やすためにファイバーの外径を太くしたものも少なくない。
対して、NTTはあくまで標準外径(125μm)にこだわる。マルチコアファイバーの量産化や敷設工事の観点から、「早期の実用化を見据えると標準外径でチャネル数を増やしていくというアプローチが重要になる」(中島氏)という考えからだ。
NTTは国内のパートナーと共同で、すでに実証レベルでは標準外径の4コアファイバーを実現している。大きく2種類があり、1つが、一般的に使われている汎用シングルモードファイバー(ITU-TG.652/657)と同様の光学特性を持ち、アクセスからメトロ/コア向けのもの。もう1つが、海底ケーブル等の超長距離用の低損失ファイバー(ITU-TG.654)だ。
ただし、光通信はファイバーだけでは実現できず、光の増幅器や伝送システムをはじめ様々なコンポーネントが不可欠だ。そのため、4コアファイバーの実用化を目指して新たな伝送システムの開発や、標準化に向けた活動も推進。「2025年以降、遅くとも2027年には4コアファイバーを使えるようにするのが今の目標だ」と中島氏。これは、「IOWNの計画とも連動している」という。